【共同通信】

辺野古以外探る機会

 翁長雄志知事就任後の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をめぐる国と県との交渉は、国が工事を進めながら県の説得を続けるというアンフェアなものだった。国が正式に工事を中断して協議を行うという点では今回の国の和解案受け入れを評価したい。

 解決への「半歩前進」というより「スタートに戻る」だけともいえるが、これを国と県がフェアな土壌で冷静な議論をする機会とせねばならない。参院選に向けた安倍政権の争点ぼかし、時間稼ぎに終わらせてはならず、名護市辺野古への移設ではない別の解決案を真剣に探る機会とせねばならない。

 米海兵隊の沖縄駐留を必要と述べる論者は抑止力の観点から必要性を論じるが、そもそも沖縄の米海兵隊の実働兵力である第?海兵遠征隊(31MEU)は年のうち8~9カ月はアジア各地などに展開し沖縄を留守にしている。今回の和解案受け入れを機に、沖縄の強い反対を前提としながら、このような海兵隊の実態を踏まえた新しい解決案を創り出していくことも必要だ。

 米国内でも国防総省に近いシンクタンク「ランド研究所」などが米海兵隊のある程度を沖縄から米本土等に撤退させても海兵隊の運用に影響はないとの報告を発表している。同様の見解を持つ識者は米側にも決して少なくない。

 ただ、米側関係者は「辺野古移設以外の検討に値する解決案を日本側から正式に聞いたことがない」と口をそろえる。米議員と話していても、「ではどうすれば」と解決案の提示を求められる。日本政府が沖縄の強い反対を見て見ぬふりをしながら辺野古案のみに固執している限り、辺野古移設に潜在的な疑問を持つ米側関係者も動きようがない。国と県だけでなく、有識者グループ、大学、民間研究機関などが新たな解決案を描いて米側に伝える努力をしていきたい。

 国と県との話し合いが再び決裂すれば、再び裁判闘争となることが強く予想される。その結果、最高裁判決によって「司法決着」したとしても、本来の解決にはならないだろう。やっと生まれたこの対話の機会を逃してはならない。