【東洋経済 3/22】

核燃サイクル 決着ではない 米国はプルトニウムに懸念

 

「新外交イニシアティブ」は外交問題にフォーカスした市民活動型のシンクタンクだ。

米国の首都ワシントンで積極的にロビー活動を行い、沖縄の米軍基地移設問題や、核燃料サイクルといった課題の解決に取り組む。事務局長の猿田佐世氏に聞いた。

 

――原子力発電の使用済み核燃料を再処理しプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクルの見直しをテーマに、米国でロビー活動をしています。

今年7 月に、日米原子力協定が30年の満期を迎える。協定で、プルトニウム抽出のための核燃料再処理を認められてきたからこそ、日本は核燃料サイクル政策を続けることができた。期間満了日のちょうど6カ月前の1月16日には、両国政府のいずれからも見直しの申し入れがないとして協定は自動延長が決まった。それを受け、日本ではこの問題は決着したとの見方もあるが、実際はそうではない。

 

――どういうことですか。

米国では共和党、民主党を問わず、核兵器の材料となりうるプルトニウムの保有への懸念が強い。この点については、北朝鮮やイランに対してだけでなく、同盟国である日本にも他国への悪影響という意味を含めて、厳しい視線が注がれている。

日本側は再処理はエネルギー政策の一環であり、あくまでも平和利用だと説明しているが、米国からは核不拡散の観点から懸念が示されてきた。ただ、そうした懸念は日本に伝わってこなかった。しかし米政権も懸念を有しているし、7月の満期を前に今までのあり方を見直すべきだとの有力者の意見もある。

 

――実際に動きはありますか。

たとえば、ある民主党上院議員は、国務省の新たな幹部の議会承認手続きに際して、日米原子力協定に対する見解を問いただしている。ほかにも問題意識を持つ与野党議員が何人もいる。そうした議員に外交の議題として取り上げてもらえるように働きかけている。

 

――どのような成果を期待していますか。

再処理見直しの契機となりうる日米両国間の外相声明であるとか再処理に何らかのタガをはめる取り決めができたらいい。

 

――昨年9月には、与野党の国会議員や市民らが訪米し、日本の再処理問題について、米政府や議会関係者、専門家と意見を交わしました。

新外交イニシアティブによる取り組みの一環だ。原子力推進派といわれる大手の米シンクタンクなどでも、再処理の問題に関してシンポジウムの開催が実現した。

 

――最近も訪米したとか。

関係を築いてきた議員などにあらためて再処理の問題に取り組んでもらうための働きかけをしたこれまで外務省や経済界だけが担ってきた日米外交に、私たち市民もかかわっている。私たちの団体ではインターンを受け入れているが、日本人の大学生だけでなく米国やオランダ、豪州などからも来ている。事務局スタッフは20代が中心でスタッフは手応えを感じつつ活動している。

 

(聞き手・本誌:岡田広行)

 

猿田佐世

新外交イニシアティブ 事務局長

さるた・さよ●1977年生まれ。弁護士(日本、ニューヨーク州)。早法卒。国際人権団体などでの活動を経て、2013年に新外交イシアティブを設立。著書に『新しい日米外交を切り拓く』。