「日中双方とも冷静な対応を」と猿田代表 事後の影響を考えた発言や政策を|「羽鳥慎一モーニングショー」猿田佐世ND代表発言 (25/11/17)

番組の概要

国境を越えて日本の多様な声を届ける「新外交イニシアティブ(略称ND)」の猿田佐世代表が11月17日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」にレギュラーコメンテーターとして出演しました。番組の前半では、高市早苗首相が台湾有事について「存立危機事態」になり得るとした国会答弁に中国側が反発し、報復措置に出るなど、日中関係が悪化していることが取り上げられました。パネルを使って議論するメインのコーナーでは、深刻化する人口減少問題について議論したほか、新米が出回り始めても価格高騰が続く米価も話題になりました。

高市首相「存立危機事態」発言問題

政権トップはその後を見据えて発言を

高市発言がきっかけとなり日中関係が悪化していることについて、テレビ朝日系列が実施した世論調査の結果を踏まえ、議論がスタートしました。猿田代表は「中国の反応もかなり過剰なものがあるかなと思うので、そこは本当に一定のクールダウンをしていただきたいと切に願うとともに、私たち日本の方もまた過剰な反応をしてしまうと、本当に緊張が高まる一方なので、私たち日本の方も冷静にクールダウンする必要があると思っています」と、日中双方の冷静な対応が求められるとの見方を示しました。

また、「首相をはじめ影響力のある方は、発言をした後、あるいは何か政策を取った後に、どういう影響があるのかをしっかり見極めた上で、一言一言発言なり、政策なりを作っていただきたいと思っています」と付け加えました。

さらに世論調査を念頭に「例えば、『台湾有事』の『有事』という言葉が分かりづらいですし、集団的自衛権もどのくらいの方が本当に分かって答えていらっしゃるかも定かではないのですが、要は台湾で起きる中国相手の戦争に、日本が自衛隊を派兵して参戦するんだということなのですよね。そうなれば、日本の国土が戦場になるような反撃も受けるでしょう。影響力を持つ方は、自分が言った後にどういう影響があるのかを見極めて、慎重に発言していただきたい」と述べて、政権トップの熟慮した発言を再度求めました。

人口減少問題

人口減少の速度を抑える努力は怠らず、人口減少社会を前提とした施策も

パネルを使ったメインのコーナーでは、人口減少にどう対応するかをテーマに、人口減少対策総合研究所理事長の河合雅司さんが加わって、他のレギュラーコメンテーターとともに話し合いました。猿田代表はまず「どうやって人口減少を少しでも緩やかに抑えるのかという方法が1つと、人口が減ってしまう現実を受け入れながら、八掛け社会なんてよく言いますけれど、八掛け社会の中でどうやって少しでも幸せな生活をしていけるのか、その二つを車の両輪として、両方をやっていく必要があると思っています」

「この問題は、人がどういう時に幸せを感じるのかという、究極の問いを突きつけられています。都市に人を集中しながら、経済発展していくのが幸せなのか。それともこじんまりとして少し不自由はあるけれど、自然に囲まれて暮らすのが幸せなのか。人それぞれなので、対策は簡単じゃないと思うので、(今日の番組で)これから他の国の例で勉強できたらなと思ってます」

「日本が他の国と一番違う点は、その人口減、少子化が急速に進んでいることで、進行がもう少しなだらかであればソフトランディングできるところが、できそうもないということもあるので、人口減少を止められなくても、減少の速度を少しでも緩和する政策は忘れてはいけないと思います」と述べました。

子どもたちを育てて幸せと思える空気感

海外の人口減少対策ではまず、韓国の例が取り上げられました。猿田代表は「日本の場合だと、結婚したカップルが産む子供の数はそんなに減っていません。結婚に至る過程がなかなか難しいので、『人生前半の社会保障』を徹底するなどと言ったりしますが、『結婚しても生活できる』と若者が思えるような基盤、経済的な基盤とか、教育だとかを、結婚する前の世代、あるいは子供のうちから提供することがすごく大事なのかな、と思います」

「韓国の例ですが、私は留学時代の友人がたくさんいるのですが、韓国で久しぶりに友人に会った時に、子供がいなかったのですね。私より少し下の世代なんですけれど、その彼女が言ったのは、子どもは全くいらないということなんですね。どうしてか尋ねると『あれだけ勉強を頑張って、受験戦争をとにかく終えた。その後も毎日毎日がむしゃらに働いている。だけど、家を買えない。自分の子供もこんな生活の被害者にしたくない』みたいなことをおっしゃっていました。そういう空気が社会の中にあるのでしょう。自分の子どもをここで育てて本当に幸せと思えるのか、そういう空気感の醸成が実は一番大事かなという気はします」と述べました。

伝統的家族を重視するハンガリーの現政権

また、ハンガリーの積極的な少子化対策についても議論しました。ハンガリーは▽子供を4人以上生んだ女性の所得税を生涯免除▽2人以上の子供を持つ40歳未満の女性の所得税を免除-などの少子化対策を次々と取り、一定の成果もあげています。その紹介があった後、アメリカの紹介もあり、アメリカでは大量な移民を入れることで人口を増やしていることの説明もあり、その方法が日本に適しているのか、についての議論も出ました。

これを受けて、猿田代表は「ハンガリーが異次元の出産支援というのは、国際政治をやっている人なら、首をひねったりします。というのは、ハンガリーは極右政権が続いていると言われたりします。親ロシアで、ウクライナ支援に反対していたり、移民の極端な排除をしていたりする国なんですが、そこが転じてですね、ハンガリー国民が絶えてはいけない、とにかくハンガリー人の人口を増やさなくてはいけないという方向性の結論が、これだったということです。すごく左翼的な政策のように見えても、極右からの政策なのですよ。伝統的な家族のあり方が大事だ、伝統的な家族とはお父さんとお母さん、それに子供がいる家族なので、そこにお金をつけていきましょうということなのです。その1個1個の政策は、日本も真似するべきだとも思うのですが、そういうことが背景にあるので、優生思想みたいな危ない要素も指摘されており、その点には注意をしていかなければならないと思います。」

「移民の話に戻すと、今足りない労働力については助けていただいてなんとか回っているという現実もあるし、国際化、グローバリゼーションの流れで、当然ながら、外国の方が日本に入ってくるのも続くわけで、そこは受け入れつつ、他方、優生思想にはならないようにしながら、やはり少子化の対策もしていく。その上で、それでも根本的に人口が減る中で、どうやって社会を回して、みんなが幸せになっていく最低限のところはどこなのかなというのを模索していくことが必要なのかなという気がしています」と、ハンガリーの伝統的家族重視からの政策のマイナス面を指摘しました。

街をコンパクトに

人口減少を前提に、戦略的に都市をコンパクト化するドイツの例も紹介されました。猿田代表は「ドイツがすごく意識しているのは、人々が集って、コミュニティーがちゃんと一生住めるものとして、存在をしていけるのかということです。例えば、日本では、東京ですら、『買い物難民』という言葉で表されるのですが、お年寄りが車を運転できなくなってから、スーパーマーケットまで買い物に行けない、ということがあります。孤立してしまって、家の中だけで過ごしていくことになる。街をコンパクトにして、車社会ではなくて、人が歩いて買い物をして、また家に帰っていける、そういう社会を作っていく。週末に車で郊外型の店舗へ買い出しに行く、それができるのは、若い人たちだけ。ドイツの試みは、是非、政府の方などにも見に行っていただきたい」

「あと、忘れていけないのは、都市の方が出生率が低いこと。ゆとりある地方都市だとか、田舎の出生率は高いので、都市だけに集中するのはやはり良くないのだろうと思います」と話しました。

コメ価格高騰問題

コメ離れせずに買い支え

番組前半では高騰が収まらないコメの価格についても焦点を当てました。猿田代表は「消費者の〝安いお米の方がいい〟という気持ちと、生産者の〝高い方がいい。やっと今までの赤字を補填できる〟という気持ちのバランスだと思うのですが、ちょっと価格が高すぎるので、お米離れが少し出始めているというニュースもあります。歴史的に見て、なぜ政府が生産調整をしなければいけなくなったかというと、食生活の多様化で、コメの消費量が右肩下がりで落ちたということがあります。今の新米は本当においしい。高いからたくさんは食べられなくて、少し値段が落ち着いてからかもしれないけど、私たちにも日本のコメを食べて支えることはできると思います。日本は自給率も低いのですが、お米をあと1口、全国民が食べるだけで1%自給率上がると、政府のウェブサイトにも書いてありました。米の価格は高い方が嬉しいけど、やはり米離れは本当に心配だと、生産者もおっしゃっていましたね。お米は日本の文化そのものだと思いますし、それを守りたいと思います」と、米離れをせずに買い支えたいとの考えを示しました。

※番組は放送から数日後に無料動画配信サービス「TVer(ティーバー)」で配信され、一定期間ご視聴いただけます。
https://tver.jp/series/sr83kmd6bw