出産や介護しながら活躍できる社会を 高市首相の「働いて働いて」発言|「羽鳥慎一モーニングショー」猿田佐世ND代表発言 (25/12/15)

番組の概要

国境を越えて日本の多様な声を届ける「新外交イニシアティブ(略称ND)」の猿田佐世代表が12月15日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」にレギュラーコメンテーターとして生出演しました。パネルを使って議論するメインのコーナーは、官僚たちの長時間労働が問題視される「ブラック霞が関」について、コメンテーターが意見を交わしたほか、コメの価格についても話題になりました。

「働きすぎ」を助長する政治への危惧/負担の多い日本の官僚

過労死が出ているのに労働時間の規制緩和

まず、取り上げたのは高市首相の「働いて働いて働いて働いて、働いてまいります」という発言でした。猿田代表は「総理の『これから頑張るぞ』という意思表明としてはいいと思いますが、日本では、過労死(Karoshi)という単語が英語になるぐらい、たくさんの方が働き過ぎており、命を落とす人まで出ているという問題があります。しかも、高市さんは政策としても労働時間の制限の緩和を挙げており、残業規制を緩くしていこうとしています。この発言では『すごく強くないと社会で成功者って見られないのか』みたいな気持ちが広がってしまいます」と、働きすぎが日本社会で問題になっている現状と、高市首相がそれをさらに悪化させる可能性を指摘しました。

介護をする首相といった面も見せて

猿田代表は続けて、世界で初めて任期中に産休を取って出産したニュージーランドの女性首相アーダーン氏の例を挙げ、「6週間の産休をとって、そのことでアーダーン首相は支持率が上がったんです。私が、高市首相ってすごいなと思っているのは、ご両親の介護を東京と奈良を往復しながら苦労してなさったこと。今もお連れ合いの介護をされている。介護しながらもいろいろできるんだよ、幸せになれるんだよという意味で、もっとそういうところを表に出してはどうか。介護しながらでも総理大臣ができる、『今日は介護があるので午後はちょっと休まなきゃいけない』みたいにしていただけると、いろんな高市さんが見えるし、国民もこういう生き方も認められるんだという、そんな素敵な高市さんを出していただく方が、より親近感が湧くかな、と思っています」と述べて、長時間働く強い人としての像だけでなく、様々な問題を抱える多くの人々にとってもモデルとなるような姿を見せることが必要ではないかとの考えを示しました。

そこまで細かい答弁集がいるのか?

多忙な官僚の仕事で負担になっているのは、国会の質疑で大臣らが答弁する際の資料を作成することだそうです。これについて、猿田代表は議院内閣制のモデルになっている英国の議会について「首相に対し、質問通告なしで質問を問いかけて、首相が質問に答える。本音でのやり取りを見て、野党の党首や首相の人柄が分かる。そういうのを毎週やっている」と説明した上で「日本では分厚い答弁集があって、何を聞かれても『どのページに書いてあったっけ』みたいなやり取りになる。党首討論を見ても、『人柄が分かった』なんて思ったことはなくて、ただ読んでるなとか、ちょっと語気が強いなというくらいじゃないですか。大きなところは政治家に任せ、数字などのファクトは書面で示せば足りるなど、取捨選択することはできないんですか?」と疑問を投げかけました。

米議員の政策スタッフは日本の10倍?

さらに議論は深まり、負担が多い官僚から他の職業へ転職するケースが紹介されました。その原因として官僚に頼る政治家のあり方が指摘されると、猿田代表は「政治家が頑張って、いろいろやるとすると、例えば、米国議会では上院議員だったら政策秘書が40人ぐらいたりする。日本は秘書3人でそのうち政策秘書が1人みたいな世界。米国は日本に比べて議会の態勢が圧倒的にしっかりして、議員から政策も出していけるが、日本は議員のスケジューリングをするだけでも秘書さん必死ですみたいな感じ。やはり、そこも変えなきゃいけない。今、定数削減の話が出ている時に秘書を増やしましょうと言ったら、炎上してしまう・・・」と話したところで、遮られて発言を終えました。

英米の事情との比較で、政治家を支える日本の貧弱な体制を問題にした代表猿田に、後に何を話そうとしたのかインタビューしたところ、

「イギリスでは首相答弁は党のスタッフが作り、その答弁作成過程などで党スタッフが政策通になって、その後政治家になり、首相になった人もいる。アメリカでは何十人という補佐官が議員を補佐して、まさに立法府が中心に立法が進められていく。日本では国会に提出される法案のほとんどが閣法(内閣提出の法案)であることに表れるように、官僚が日本の政策のほとんど決めている。しかしこれでは、たとえ政治が変わっても政策は変わらない。国民の代表である国会議員が力を発揮できるように、もちろん国会議員自身も力をつける必要があるが、個々の国会議員の努力だけでは限界はあるため、イギリスやアメリカのように政治家を支える充実した制度が必要である」と述べました。

コメ価格問題

米価が下がれば食べて支援

パネルコーナーに先立って、わずかに値下がりした米の価格が話題にされました。猿田代表は「(価格が)いつ下がるんだろうと、ずっと言ってきたが、なかなか下がらない。今後、下がれば、私たち消費者にはお米が食べやすくなって、そのこと自体はいいことだと思うんですけれども、農水相が気にしているのは、農家さんも支えていかなければいけないというところ。コメは日本の将来にとって、食料安全保障でも、和食文化という面でも大事なので、これから値段が下がって食べやすくなったら、今度は農家が困らないように私たちがしっかり食べよう、となっていけばいいかなと思う」と、値段が下がったら食べることで農家を支援する考えを示しました。

 

※番組は放送から数日後に無料動画配信サービス「TVer(ティーバー)」で配信され、一定期間ご視聴いただけます。
https://tver.jp/series/sr83kmd6bw