新基地反対 国と対決/撤回経て二つの訴訟/玉城県政1年/辺野古

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【新基地反対 国と対決/撤回経て二つの訴訟/玉城県政1年/辺野古】(沖縄タイムス 10/4)

就任から1年となった玉城デニー知事。急逝した翁長雄志前知事の遺志を継ぎ、過去最多の得票で当選して以来、米軍基地問題や沖縄振興、福祉・医療、雇用などに奔走してきた。辺野古の新基地建設では、埋め立て承認撤回を巡り、国との訴訟に発展するなど対立が続いている。2021年度末に期限を迎える沖縄振興計画の総点検と、それを踏まえた次期振計の策定など、振興策のかじ取りにも注目が集まる。

玉城デニー知事が就任した昨年10月4日の時点で、前県政は名護市辺野古の埋め立て承認を撤回していた。玉城知事は就任直後から辺野古問題への対応を迫られ、国土交通相の撤回取り消し裁決を経て国との二つの訴訟に発展している。

翁長雄志前知事の県政は昨年8月に名護市辺野古の新基地建設を巡る埋め立て承認を撤回。沖縄防衛局は同年10月に行政不服審査法(行審法)に基づき国土交通相に撤回の取り消しを求め、取り消しを裁決するまでの撤回の効力の執行停止も求めた。

国交相は同月に執行停止を決定。撤回で中断していた工事が再開され、同年12月に初めて辺野古側の埋め立て区域に土砂が投入された。さらに、国交相はことし4月の裁決で撤回を正式に取り消した。

県は国交相の裁決の取り消しを求める二つの訴訟を提起している。

裁決を「違法な国の関与」として取り消しを求めた訴訟は9月18日に第1回口頭弁論が福岡高裁那覇支部であり、即日結審。10月23日に判決が言い渡される。

県は行審法は国民の救済を目的としており、同法を根拠にした防衛局の請求と防衛相の裁決は違法と主張。意見陳述に立った玉城知事は「違法な国の関与に裁判所がお墨付きを与えることになれば、地方自治や法治国家に未来はない」と主張した。

那覇地裁にはもう一つの「抗告訴訟」を提起。県に訴える資格が認められれば、埋め立て承認後に見つかった軟弱地盤などを理由とした県の撤回の適法性を争う本質的な審理に入る。

サンゴ移植 申請認めず/判決確定まで保留 長期化も

沖縄防衛局は新基地建設で辺野古側の埋め立て区域への土砂の投入を続けている。一方で、新基地に必要な埋め立て面積全体の4分の3を占める大浦湾側には移植対象のサンゴ7万4千群体が生息。防衛局は埋め立て前に県にサンゴの移植を申請し、移植しなければならない。

県は現在進める二つの訴訟のうち少なくとも一つの訴訟で司法の最終判断が出るまで、移植の申請を保留する考えだ。

今年7月に「国の関与」取り消し訴訟を提起した際、玉城デニー知事ら県首脳は「判決確定まで申請内容の必要性を判断できない」との方針を決定。県庁内の関係部署にサンゴ移植や岩礁破砕許可などの申請が出された場合、判断しない方針を打ち出している。

関与取り消し訴訟は10月に判決が言い渡されるが、県と国のいずれが敗訴しても最高裁への上告が予想され、判決が確定する時期は不透明だ。

もう一つの「抗告訴訟」は判決確定まで1〜2年が見込まれる。

米や国内回り世論喚起

玉城デニー知事は昨年11月、就任からわずか1カ月で訪米しニューヨーク大での講演や国連幹部との面談で名護市辺野古の新基地建設に反対する民意を訴えた。今月14日には2度目の訪米を計画している。

米連邦議会は2020米会計年度の国防権限法案で「インド・太平洋地域における米軍の分散配置の再検証」を国防総省に求める条項を盛り込んだ。知事は在沖海兵隊の配置の見直しを求め、議会や政府関係者を中心に普天間飛行場の辺野古移設の見直しを訴える。

新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票で反対の民意が示される歴史的な節目もあった。今年2月の県民投票後、玉城知事は安倍晋三首相ら日米に投票結果を通知した。

国民が米軍基地問題を全国の問題として共有するためのトークキャラバンも今年6月にスタート、東京、名古屋、大阪で講演。今後は札幌や仙台、福岡などでの開催を検討している。7月には国内最大級のロックフェスティバルに出演し、沖縄の基地問題を訴えた。