辺野古基地の建設ー不要不急の巨費投入

4月21日、日本政府は沖縄県に対し辺野古基地建設についての設計変更を申請した。政府自らが新型コロナによる緊急事態宣言を出して「自粛」を求めている最中の出来事であり、沖縄県知事が県独自の緊急事態宣言を出した翌日のことであった。約2200頁もの申請書を突然持参された沖縄県は、テレワーク中の職員を呼び出して対応せざるを得なかった。

基地建設の日米合意から24年が経過している。これまで国は、重要な選挙の前など、自らに都合のいいときには工事を中止してきた。例えば、2014年の県知事選の前には故翁長雄志知事の当選を阻もうと63日間、その工事再開の2日後に衆院解散で衆院選となったために再び53日間工事を止めている。辺野古の基地建設はまさに不要不急であり、社会の目がコロナに奪われている間の「火事場泥棒」との批判が相次いだ。

今回の国による設計変更申請は、埋め立て予定の大浦湾の海底がマヨネーズ並みの軟弱地盤であると判明したためになされた。これにより辺野古基地建設の総事業費は2兆5500億円(2020年度の日本の防衛予算総額は5兆3133億円)に上ると沖縄県は試算する。前例のない困難な地盤改良工事が必要となり、巨費をつぎ込んでも工事完了の時期は見通せない。

政府は、米海兵隊が駐留する普天間基地の移設先として「辺野古が唯一の選択肢」と呪文のように繰り返す。しかし、米海兵隊は強襲上陸を得意とする部隊であり、尖閣をめぐる中国との紛争や北朝鮮とのミサイル等による紛争に真っ先に対応する部隊ではない。安全保障の視点によっても辺野古に新基地を建設する必要はない。であれば、コロナ禍で日本経済が歴史的危機に直面する中、巨額を投じて進める価値があるのか、いま一度振り返る必要がある。

この間、米国はコロナにより甚大な被害を出し、白人警官による黒人殺害など混乱の極みにある。超大国として世界をリードする姿は露も見られず、今後も世界での影響力を少しずつ落としていくだろう。日米の関係も、ごくゆっくりではありながらこれまでの絶対的なものから相対的なものに変化していかざるを得ない。国際情勢は常に、そして急激に動いている。米議会では今年度の米軍事予算を決める国防権限法の審議において、米軍再編の再検証を求める条文を上院が可決した。辺野古基地建設は米軍再編の一部である。両院が成立させた最終の法律では文言の変更がなされたが、なお、国防長官にアジア太平洋地域の米海兵隊の展開についての報告を求め、変更の提案があれば記載するよう要求している。

米軍基地でいえば、米国は駐留経費の受入国負担につき日韓に4倍から5倍増しといった要求をしてきた。先行する米韓交渉では韓国が抵抗し、米軍が韓国人基地従業員給与の支払いを止めるといった事態になっている。秋からは日本も交渉に入る。必要な場面において、日本も米国に対し物申していかねばならない。

今年は、戦後75年、日米安保条約締結60年の年である。この間、沖縄の人々はずっと米軍基地の存在に生活を、時に命まで脅かされてきた。コロナ禍中も、有害物質の大量流出による水質・土壌汚染に苦しめられ、米国防総省の基地別のコロナ感染状況を非公開とする方針により不安を強いられている。沖縄はこれまでも多くの選挙や県民投票で辺野古埋め立て反対の意思表示をしてきたが、この6月7日にも、自民党沖縄県連が初めて「辺野古基地建設容認」を明確に掲げた県議選で再び建設反対派が過半数を占めた。ここまでの強い反対にもかかわらず、なぜ日本政府は辺野古基地建設に固執するのか、なぜ日本にある米軍専用施設・基地の7割が沖縄に集中するのか、改めて考える年にしていかねばならない。