シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND、猿田佐世代表)」は26日、外交安全保障全般にわたる政策提言を初めてまとめ、オンラインシンポジウムで発表した。防衛政策の議論が戦術論の「抑止一辺倒」に陥っていると懸念を表明した。沖縄の過重な基地負担は「日米同盟の最大の不安要素」と指摘し、名護市辺野古の新基地建設中止や、日米地位協定の改定も盛り込んだ。
提言は「抑止一辺倒を越えて-時代の転換点における日本の安全保障戦略」。米中対立などの国際情勢を踏まえて展開している。
安保法制による集団的自衛権の容認で日米軍事一体化が進み、米中の戦争に巻き込まれるという「同盟のジレンマが現実化する危険が増大している」と指摘。
日本が軍事的な技術論に傾斜することに警鐘を鳴らし「米中の軍事衝突を避けるため、日本にどのような貢献ができるか冷静に検討し、両国の『懸け橋』とならなければならない」と提言している。
米国の新たな対中軍事戦略で、在沖米軍基地の在り方にも「大きな変化をもたらす可能性がある」と明記。1兆円近くを投じ、少なくとも建設に12年かかる辺野古の新基地も、完成時には「海兵隊のニーズに合わない壮大な無駄に終わる恐れが出てきたことは否定できない」とした。
「『普天間の危険性除去と抑止力の両立』のために『辺野古が唯一の選択肢』としてきた政府の論理は破綻している」と強調した。
執筆者の一人で元官房副長官補の柳澤協二氏は、シンポで「日本人は、ミサイルを置いたら抑止力になって戦争にならないという安心の仕方をしている」と指摘。「何発かはこちらにも飛んでくるという覚悟なしに、抑止力という言葉をもてあそぶことはリアリティーを欠いた間違った議論だ」と警鐘を鳴らした。