台湾有事回避へ努力を 沖縄を二度と戦場にしないために [ND新提言 抑止一辺倒を越えて](下)

4月16日にあった日米首脳会談後の共同声明に「台湾」が52年ぶりに盛り込まれた。米国は、中国による台湾の武力統一に強い警戒感を持つ。

インド太平洋軍のデービッドソン司令官は3月9日の上院軍事委員会で「台湾への脅威は6年以内に明白になるだろう」と期限を区切って台湾有事の発生に言及。後任のアキリーノ海軍大将は同月23日、同委員会で台湾有事に介入すべきだとの認識を示した。

中国を管轄区域に持つ2人の司令官は「台湾有事は迫る」で一致する。

予兆はあった。昨年5月、中国の全国人民代表大会で李克強首相は、台湾との「再統一」に触れた政府活動報告から「平和的」との文言を初めて削除した。武力による台湾統一の可能性に言及した瞬間だった。

そして中国は2027年までに軍を現代化する目標に掲げている。27年は「6年以内」だ。

中距離ミサイルの保有を禁止した中距離核戦力(INF)条約の制約などで、劣勢となった米国のインド太平洋軍は中国への対抗策を急ぎ、6年間で273億ドル(約3兆円)を投じる予算要望書を3月、議会に提出した。台湾有事を想定し、第1列島線にミサイル網をつくる構想を含んでいる。

有力な配備先は、米軍基地が集中する沖縄だ。中距離ミサイルばかりでなく、戦闘機なども増強され、米国は「中国を抑止するためには不可欠だ」と説明するだろう。抑止力を信奉する日本の政治家は、抑止が破られることもあり得るとは考えないから、歓迎するのではないだろうか。

だが、台湾有事はたちまち日本有事に発展する。避けるためには、米軍の増強策にNOを突きつけるしかない。日本を出撃基地兼補給基地として利用できなければ、米軍は台湾有事介入を断念せざるを得ない。

その一方で、中国には力ずくの台湾統一を放棄させ、国際社会は武力による問題解決を認めないことを粘り強く説くべきだ。

ともに実現不能とも見える困難な道だが、沖縄を二度と戦場にしないためには、この道を選ぶほかないだろう。(防衛ジャーナリスト、元東京新聞論説兼編集委員)

半田滋(はんだ・しげる)

防衛ジャーナリスト/元東京新聞論説兼編集委員。獨協大学非常勤講師。法政大学兼任講師。下野新聞社を経て、91年中日新聞社入社。2007年、東京新聞・中日新聞連載の「新防人考」で第13回平和・協同ジャーナリスト基金賞(大賞)を受賞。