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「新しい外交を築く人々―NDの現場から―」(1) 松岡美里さん 理論と実践を大切にしたい 英語発信や対外プロ ジェクトを精力的に担当 帝京大学外国語学部准教

書籍「戦争を回避する『新しい外交』を切り拓く」は、新外交イニシアティブ(ND)の発足後10年間の歩みをまとめている(2025年発刊)。三部構成になっており、その第一部「『戦争』が溢れる時代」は、松岡美里さんの執筆だ。帝京大学外国語学部の准教授として、国際関係論など6科目を受け持つなど、多忙な大学での授業の傍ら、NDの活動にも深く関わる新進気鋭の国際政治学者である。

NDとの出会い

2011年秋から、英国のウォーリック大学の博士課程で日米同盟と覇権(ヘゲモニー)を研究し、その一環でシンクタンクの言説分析に取り組んだ。NDに出会ったのはそのころだった。「米国だけでなく、日本の方にも目を向けてシンクタンクの報告書の分析をしてたんですね。NDは2013年にできたんですけど、私は2015年ごろに注目するようになりました。面白いなあというのと、研究対象でもあったので、そのころからウォッチしていたという流れです」

政治学・国際関係学で博士号を取得して、2016年春、日本に戻った。国際基督教大学、明治学院大学、東海大学などで非常勤講師をしながら、フルタイムのポストを探していて、NDと再び出会うことになる。

「2016年の終わり頃、NDでスタッフの募集をしていました。受かるかどうか分からないけど、まあ面白そうだし、申し込もうと思って。それでNDで働くことになりました」

NDでのスタートは訪米活動

米ニュージャージー州生まれの松岡さんはネイティブの英語を話せるバイリンガルだ。1996年、米国から日本に帰国した。その後、上智大学の比較文化学部(現・国際教養学部)に進学し、上智大学大学院ではグローバル・スタディーズの修士号を取得する。大学院在学中の2010年には米カリフォルニア大学バークレー校に9カ月間留学して平和紛争学を学んだが、その間、以前から興味を抱いていた国際連合で2カ月間インターンとして働き、国連本部政治局北東アジアチームでリサーチ・アシスタントを務めたこともあった。その後、英国のウォーリック大学で博士号を取得したのは先に書いた通りだ。

NDでは2017年1月から働き始めたが、そうした経歴、豊富な国際知識と堪能な英語力を生かして、訪米活動のサポートを受け持った。「訪米活動にも行ってます。鳩山由紀夫元首相の訪米では、約一週間、ワシントンやニューヨークを回る元首相を猿田さんと二人でサポートしながら貴重な経験をさせていただきました。2018年4月から大学のフルタイム教員になるまでは、非常勤の仕事だったので、フットワーク軽く同行してました。」

日米中韓クアッド

NDでの今のメインのお仕事は?と問いかけると「今一番関わっているのは、クアッド(QUAD)ですね」と返ってきた。本来のクアッドは日米にオーストラリア、インドを加えた4カ国で構成される国家間枠組みである。軍事面でも存在感を増す中国を意識した枠組みだと見られるが、ND版は日米に韓国と中国が参加して「オルタナティブ・クアッド(もう一つのクアッド)」とも呼ばれる毎年開催の四カ国対話だ。日米中韓4カ国から研究者が集まり、論文を発表したり意見交換したりする国際研究会で、2023年からスタートした。研究会に参加して研究発表を行うのはもちろん、参加者の調整をしたり、連絡したりという事務局的な仕事も担ってきた。

「元々、訪米活動で関わったような米国側の人とか、猿田さんたちが韓国を訪問した際にできたつながりなどから、もっと各国間の外交のチャンネルを増やすべきじゃないかという思いから生まれたものです。政府のクアッドは中国包囲網のようなイメージがありますが、そうではない対話の場をつくりたいと思いながらやってますね」

NDコンパス

もう一つの担当として挙げたのが、「NDコンパス(ND Compass)」。NDの公式サイト上で、日本語だけでなく英語でも情報発信をする取り組みだ。NDが目指すのは、日本国内の多様な声を国境を越えて届けるマルチトラックな外交だが、それを具体化したもう一つのプロジェクトがNDコンパスだと言える。

「日本の安全保障や外交政策について英語で書かかれたものは、いわゆる保守的なものに偏っています。日本の中のリベラルなというか、他国との「建設的なダイアログ(対話)」を求める声も日本の中にはしっかりと存在するのに、英語の世界では存在が見えなくなってしまっている。だからそれを英語で発信するというプロジェクトなんです」

「国内のリベラルな声が海外であまり知られていないのはなぜかというと、まず、リベラルの側に英語で発信する人がいないから。ですので、リベラルな声、オルタナティブな声をNDで英語にして届けたい。特に英語での発信が足りない日本の考え方を、英語にするよう心がけています。」

バイリンガルの松岡さんが言うと、いかにも簡単そうに聞こえるが、アカデミックレベルの英語力、そして、それだけでなく、国際関係に深い知識が必要なことは言うまでもない。

批判的思考力(クリティカルシンキング)

松岡さんには、こだわるものがある。それはクリティカルシンキング、批判的思考力だ。「自分の、これこそある意味ライフワークかもしれないんですけど、クリティカルシンキングを大事にしていきたい」と自らに言い聞かせるように強調した。イタリアの政治思想家アントニオ・グラムシが唱えた覇権ヘゲモニーの理論を研究する中で批判的思考力の重要性を痛感したという。NDでの取り組みにも、それはしっかりと生かされている。

 

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「新しい外交を築く人々―NDの現場から―」では、新外交イニシアティブで職員として働くメンバーや、猿田代表が考えに共感する専門家や学識経験者を取り上げ、不定期で紹介していきます。