新外交イニシアティブ(ND) 代表 猿田佐世
日米首脳会談での辺野古新基地建設への言及は、これまで同様で、新しい意味はない。日米が「負担軽減」とする施策に沖縄の人々は異を唱えている。ロシアのウクライナ侵略に対して「民主主義国の連携強化」などを掲げる日米が、地域の声を無視する姿勢を取るのは矛盾と気づくべきだ。
防衛力強化の枠組みでは「抑止力」「対処力」との表現が目を引く。経済的枠組みも含め、対中抑止と囲い込みに終始する。中国との対話枠組みや、偶発的事態発生時の危機管理体制の構築、台湾の独立不承認の確認など、紛争の芽を摘み、紛争勃発の可能性を低下させる取り組みが必要だ。
岸田文雄首相が最も行うべきは、米中対立を先鋭化させないよう、米中双方に自制を求めることだ。尖閣問題を含め、日本単独では中国と全面戦争になる展開は考えづらい。今回、多くの認識の一致を日米で確認しているが、中国との近接性やこれまでの関係など日米間での違いも認識する必要がある。
台湾有事では沖縄から戦闘機が出撃することになる。中国側から見れば、報復攻撃の対象にもなる。有事になれば軍事基地攻撃は民間地と異なって国際的な批判も浴びにくい中、基地があるが故に沖縄が攻撃を受ける事態になりかねない。戦争をさせない環境作りにむけ、一層声を上げねばならない。