敵基地攻撃効果薄く ミサイル迎撃難しく 結局、外交あるのみ

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軍事評論家の田岡俊次氏は「ミサイルは山岳地帯の谷間やトンネルに隠しており、移動式発射台も使っている。『反撃』するなら、目標の位置を正確につかまなくてはならないが、常時リアルタイムでつかむのは難しい」と語る。

そうした困難さを口実に、政府は敵基地攻撃能力の保有に前のめりだ。日本への攻撃を思いとどまらせる抑止力になるというが、田岡氏は「相手より多くの、強力な武器を持たねば『抑止』にならない。だが、日本が大量のミサイルや核兵器を持つことは考えられない」と指摘。膨大な予算を現実的でない「反撃能力」に注ぐ防衛政策を「効果が薄い」と断じる。

加えて、ICBMは射程が約5500キロ以上で、北朝鮮から米本土を狙えるという事実もある。日本を攻撃するつもりなら、より射程の短い中距離ミサイルを使うはずだ。

◆必要なのは「外交で解決図る姿勢」

民間シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」の猿田佐世代表は「北朝鮮が意識しているのは米国。日本を狙っているわけではない」とし、危機をあおって反撃能力強化を唱える流れを危ぶむ。「そもそも、想定されている反撃能力自体が机上の空論に近い。ミサイル発射の察知や発射前の軌道予測は難しい。日本を狙っていないのに『反撃』と称して攻撃すれば、先制攻撃になる。自ら戦争を呼び込む行為だ」

北朝鮮対応を巡り、岸田文雄首相は今年1月の施政方針演説で「不幸な過去を清算し、日朝国交正常化の実現を目指す」と述べた。「条件を付けずに金キム正恩ジョンウン朝鮮労働党総書記と直接向き合う決意だ」とも語っているが、今のところその動きはない。それどころか5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で、北朝鮮の核・ミサイル開発への関心を高め、各国の結束を図ろうとしている。

「中国や北朝鮮を封じ込める外交。緊張を高め、軍事力を補完するだけだ」と猿田氏は語り、外交力で解決を図る姿勢が欠かせないと説く。「北朝鮮に強硬姿勢をとってきた安倍晋三政権が終わった今、対話に入る姿勢を見せてはどうか。北朝鮮のミサイル演習と日米韓の軍事演習の応酬によるエスカレーションを避けるため、日本が主導権を握って緊張緩和に向けた当事国との外交を展開するべきだ」

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230415東京新聞