「辺野古以外の選択肢を」モートン・ハルペリン元米大統領特別補佐官

民主主義国に軍事基地を造るときには、その負担を受け入れる地域の人々の意見を慎重かつ真剣に考慮すべきだ。人々の声を無視して造った基地に安定的な将来はない。

特に外国の領土に基地を造る際は、地域の人々の意見を聞くことがより重要になる。その努力をしないと、地域社会の抵抗が基地の存在の将来を脅かし、果ては2国間の主要な外交問題になっていくからだ。

普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設をめぐる県民の意思ははっきりしている。名護市長選、沖縄県知事選は、県民が移設に反対していることを明確に示した。

このような状況において、日米両政府が辺野古移設を断念すべきことは明白だ。今後、県民の反基地運動がさらに広がれば、嘉手納空軍基地を含む他の沖縄の米軍基地に対する民意にも影響しかねない。日米関係を損なうことは明らかだし、基地の存在に敵対的な民意に囲まれることで、駐留する米軍人の任務が困難にもなるだろう。

昨年9月、私は沖縄を訪ね、新基地建設が計画される地域を見て回った。沖縄の人々の平和を希求する思いが過去の悲惨な沖縄戦に深く根ざしていることを実感した。辺野古沖のボートの上で、美しい海と住民の声に強く心を動かされた。住民は環境を守り、次の世代に引き継ぐために闘っていた。

日本政府はこの民意をただ黙殺し、美しい海にコンクリートブロックを投下している。米国が最も誇りとするところの民主的プロセスを、このようなやり方であからさまに否定することは、日米両国にとって最善の選択にはほど遠い。

普天間飛行場の移設問題をめぐる昨今の議論は、沖縄に米海兵隊が存在することの必要性をめぐる新しい検証抜きで進められている。米軍は海兵隊基地を置く場所に関して、沖縄以外の東アジア地域、あるいは米国内の基地など他の選択肢を真剣に検討する必要がある。そして、抑止力および軍の運用の観点から、他の可能性を選んだ場合の意味も考えるべきだ。

沖縄だけが唯一の選択肢ではないだろう。新基地建設に着手する前に日米両政府は真剣に検証すべきだ。実際、日米両国で多くの専門家は他の選択肢を提案している。

日本政府の同意なくして米国は辺野古に新たな基地を造ることができない。意思決定は日本側に委ねられているのだ。

私は沖縄返還交渉に米側担当官として関わったが、その際も日本政府に「沖縄を返してほしい」と言わせなければならなかった。なぜなら日本政府は拒絶されるのをあまりにも恐れ、そう言わなかったからだ。

その姿勢は今も変わっていないように見える。辺野古の新基地建設において、米国に「不可能だ」と伝えることを恐れるべきではない。衆院選の小選挙区での結果を含め、沖縄の人々が基地建設に反対していることは間違いないのだから。

ボールは今、日本側にある。日本政府の賢明な選択を期待したい。そして、米政府には、何よりも日米同盟の長期的運用に資する形でそれに応えてもらいたい。

MORTON HALPERIN(モートン・ハルペリン)

38年ニューヨーク生まれ。ジョンソン政権下の国防次官補代理として66~69年、沖縄返還交渉を担当。クリントン政権で大統領特別補佐官。昨年、シンクタンク「新外交イニシアティブ」の招待で47年ぶりに沖縄訪問。核戦略の専門家で「オープン・ソサエティー基金」上級顧問。