「基地阻止の知事権限縛らず 辺野古問題 国と県の「和解」で」
沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設をめぐる訴訟で、国と沖縄県が和解してから一カ月が経過した。工事は中断し協議が始まったが、両者が歩み寄る気配さえない中、再度訴訟となった場合「判決確定後は誠実に対応する」などとした和解条項の解釈が割れている。地元議員団などの訪米を支援した経験のあるシンクタンク「新外交イニシアティブ」事務局長で、弁護士の猿田佐世さんに見解を聞いた。
―国は工事を中断して知事の承認取り消しに是正指示を出すなど法的手続きをやり直し、その間は国と県が協議を続けることになった。評価は。
「工事が止まることは、とても大きなこと。だからこそ、県は和解案に乗れるとの考えだった」
―和解条項に、知事の承認取り消しについて再び訴訟となり判決が確定した場合は「国と県は判決に従い、主文と理由の趣旨に従った手続きを実施」「その後も趣旨に沿い互いに協力し誠実に対応」との規定が盛り込まれた。この解釈は。
「政権内には、国が勝訴すれば新基地建設全体に県が協力することを約束したとの解釈があるようだ。だが、和解の対象は昨年10月になした翁長知事の承認取消のみ、つまり、承認取消当時の知事の判断の誤りの有無に限られる。したがって、将来別の理由で知事が承認撤回することや、今後必要となる工事の設計変更に対し知事が承認権を行使することを何ら拘束するものではない。」
―翁長雄志知事は「あらゆる手段で新基地建設を阻止する」としてきたが。
「それは間違いなく変わらないだろう」
―日米首脳会談で、オバマ大統領が和解に「懸念」を表明したが。
「日米の官僚機構は現在の合意を進めたいので、あえて大統領に言及させたのだろう。だが、米政府内でも『辺野古が唯一の解決策』と思っている人は実際は少ない。現実は、国が強行に進めようとしても地元の反対で二十年間基地を作れていないし、今回も工事を止めざるを得なかった。国と県の協議は、辺野古ではない解決案を日本全体で検討する機会にすべきだ」