在沖米軍縮小の可能性
トランプ新大統領の下での対日政策は予想が極めて困難である。
米国では大統領が変わるごとに政権の高官が何千人単位で入れ替わり、新しい政策を実行していく。これまでは、民主党系、共和党系の知日派が大統領選挙ごとに政権内に入ったり出たりして対日外交を担ってきた。もっとも、共和党系の主要な知日派たちは皆、選挙期間中にトランプ不支持を明言しており、トランプ氏が彼らを政権入りさせるかどうかは疑問も強い。となると、経験のない者に対日外交を担わせるか、妥協含みで既存の外交を司ってきた人々を政権入りさせるかいずれかの選択となろう。
「駐留経費を全て払わなければ、米軍を撤退する」という発言ばかり日本では強調されるが、現実には米国が対日政策を大きく変更する可能性は高くない。予算を握る米議会や、日米におけるこれまでの安保担当者などの抵抗が極めて強い中、既存の政策の大転換を必要とする氏の多くの公約のうち対日外交は優先順位が高いものではないからである。トランプ陣営のスタッフも、当選すればもう少し現実的な路線をとると日本に対し説明もしてきた。
なお、改変に着手した場合でも、米国の利益を計算した上での変化となり、やはりこれまでの主張ほど極端なものにはならないだろう。氏は米軍の日本駐留が米国のためのものであることを知ることになる。
もっとも、その場合であっても、真の意味で不要なものは撤退・縮小させる可能性がある。
例えば、予算が限られる中での孤立主義において、米軍の海外展開は、もっとも縮小対象にしやすい分野である。在沖海兵隊の辺野古基地建設は、政治的リスクも高く、時間もかかり、抑止力の点で他に取りうる手段がある中で、米国にとって変更が比較的容易な政策であるともいえる。もちろん、辺野古案撤回や海兵隊沖縄撤退には、これまで外交を担当してきた日米関係者からの抵抗が強いだろう。しかし、必要な撤退費用や他地域での米海兵隊の運用に必要な施設整備などにかかる経費を日本が出すことで、トランプ氏の「国益維持・米軍増強」の公約と一致させ、実現可能な政策とすることができるかもしれない。介入政策をとらないとするトランプ氏にとっては、現在米国が広く担う東アジア地域の災害救助などを日本が代わりに行うことも米国に提示できる条件となるだろう。
これを機会に、日本が主体的に、真に日本のためになる政策を考えていく必要がある。この激震を、あるべき外交政策を実現する機会とせねばならない。