【運用変更で新基地不用 ND、辺野古で米に提言へ 猿田事務局長に聞く】(琉球新報 7/6)
【東京】シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」メンバーが今月中旬から訪米し、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設計画の代替案をまとめた提言書を米政府関係者らに提示する。海兵隊の各種部隊は約半年ごとのローテーションで沖縄に駐留しているが、提言書は米軍のローテーション部隊と佐世保(長崎県)の揚陸艦が合流する「ランデブーポイント(落ち合い場所)」を沖縄から変更することなどを提案する。沖縄の31海兵遠征部隊(31MEU)が県外・国外に移転しても、隊員が長崎で揚陸艦に合流するなど運用を見直せば新基地建設は不要だと結論付けている。NDの猿田佐世事務局長に訪米の目的や意義を聞いた。(聞き手 仲村良太)
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――提言の特徴は何か。
「普天間飛行場の移設先を提言するのではなく、海兵隊の運用をどう変えるかがキーワードになる。米軍のローテーション部隊は沖縄に6カ月くらいしかいない。これまで新基地建設の必要性を疑問視しても軍事的な話になった場合に根拠を示せていなかったが、運用を変えることで2千人規模の31MEUが沖縄に残る必然性はなくなる。海兵隊が輸送に使う高速輸送船を日本政府が提供すれば米側の財政負担もなく、速やかに移動できるようになるなど具体的に示している」
――なぜこのような内容になっているのか。
「ND評議員でジャーナリストの屋良朝博さんが提言をワシントンに持っていった時、こういう運用面、軍事に理解のある提言が沖縄を含め日本から出てきたことがなかったから、たくさんの人から歓迎された。軍事的な知識を持つ人たち、同じ単語を使っている人たちに伝え、こういう考え方もあるということを浸透させられたらいい」
――日米両政府は「辺野古唯一」と現行計画を推進している。
「日本政府は米国に言われれば聞く。その米政府で日本について取り上げているのはすごく限られた一部の人たちだけで、すごく狭いコミュニティーだ。その中で、柳沢協二さんや日本政府の中枢にいた人が提言書の執筆者に入っている話題になればいい。日本政府が使う『ワシントン拡声器』の効果で、逆にワシントンの力を使って日本に少しでも影響を与えることができるのではないか」
――新基地建設は工事が進んでいる。
「外交は大きなファクトしか伝わらない。仲井真弘多前知事が埋め立てを承認して『沖縄は賛成』と伝わる。だが、公約を破り、県民が怒っていることなどはあまり伝わらない。県が最高裁で負けたので工事が始まったことは伝わるが、翁長雄志知事が権限を使って阻止すると言っていること、今でも世論調査をしたら7―8割は反対だという細かいニュアンスは伝わってない。沖縄の人は諦めてない。最高裁では負けたが、いろんな手段があることを事実として伝えることも大事だ」
――訪米の目標は。
「沖縄の人たちは民主主義、環境や人権のために頑張っている。諦めていない。そこに海兵隊の運用という軍事面の理論で、辺野古に代わる案というものを米側の軍隊経験者や研究者などに提示し、沖縄の動きと相乗効果にしたい。そのために、提言書のようなことが可能なんだということを理解してもらい、研究者や上下両院の議員らから賛同者を得て、署名などをもらえるようになればいい」
NDは12日午後2時(現地時間)から米ワシントンのシンクタンク「東西センター」で提言書の発表などを予定。訪米活動費の支援を求めている。詳しくはNDのホームページhttps://www.nd-initiative.org/