【やはり情報は漏れている?ファーウェイ排除の動きの背景に、5Gの覇権争いで焦るアメリカ】
(AbemaTIMES 2/12)
国際社会の懸念を払拭するため、4万人が働き、敷地面積は東京ディズニーランド4個分を誇る中国・深セン市の本社をメディアに公開したファーウェイ。世界170カ国に従業員18万人、スマホ出荷台数ではアップルを抜いて世界2位に急成長している。
ファーウェイは現在の100倍の通信速度を持つ次世代通信システム「5G」の開発で世界をリード。売上の1割にあたる年間1兆円以上の研究開発費を投入。春に発売予定の5Gスマホに搭載する世界最速の半導体チップを発表したばかりだ。創業者の任正非CEOは「ファーウェイ製品が世界で1番。買わない国は将来後れをとる。米中貿易戦争は我々には関係ない。まだまだ成長する」と述べ、グローバル戦略に自信を示した。
中国の5G支配に危機感を抱くアメリカは世界各国にファーウェイ製品の締め出しを呼びかけ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドが排除を決定し、ドイツやフランスも同調する動きを見せている。菅官房長官は12月10日、「サイバーセキュリティを確保する上で、悪意のある機能が組み込まれた機器を調達しないようにすることは極めて重要だと思っている」と述べ、日本も事実上排除する方針を打ち出している。
また、人民解放軍の元技術者である任CEOの背後には、習近平主席がいるとも言われている。
中国の「国家情報法」は、国民や企業に諜報活動の協力を義務付けており、政府の求めに応じ、情報提供しなければならないとされている。FBIはこれを踏まえ「ファーウェイが所有するデータが中国政府の様々な用途に悪用される深刻な懸念がある」と連邦議会の公聴会で警告しているが、「アメリカの主張は事実無根だ。我が社は誰からの指示も受けたことはない」「政府から強制されても従わないつもりだ。ダメなら会社をたたむまでだ。私は共産党員だが、イデオロギーとビジネスは分けて考えるべきだ」と強調している。
2日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した弁護士の猿田佐世氏は「アメリカも今まであちこちから情報を取り続けてきた。それがファーウェイ製品からは情報が取れず、サイバー戦に負けたから幹部を逮捕したという報道もある。アメリカがここまで中国の軍門に下るということをやってしまったのが衝撃だ」と話す。
ジャーナリストの福島香織氏は「アメリカもやっていたじゃないか、という理屈はある。だからこそ中国も”やってなぜ悪いのか”となる。いわばファーウェイの問題は世界の覇権争い、スパイ合戦の問題でもある。通信での覇権を取られてしまうということは、インフラを乗っ取られるのと同じだ。電気を突然止められたりと、国家安全保障上の問題にもなってくる。そもそもインターネットは軍事技術から発達してきたものだが、西側の建前は開かれた社会、言論の自由だ。それに対し、中国は監視社会だ。カメラとAI、ビッグデータを組み合わせて、人々がどこで何をしているか、どんな思想を持っているかを特定し、悪口を言う人をあぶり出して、再教育という名目で捕まえることもできる。そういう人権侵害にファーウェイのテクノロジーが利用されているというのが西側の主張だ。だからアメリカの世論もファーウェイ締め出しに関しては反対ではないし、トランプの支持率が落ちるということもないと思う」と指摘。
国際弁護士の湯浅卓氏は「これは言ってはいけないが、アメリカは科学技術、軍事技術の奥の奥まで中国系アメリカ人の数がメチャクチャ多い。人間というのは、本当にわずかなパーセンテージで悪い人がいてもおかしくない。全員が100%善人ということはまずあり得ない。だとしたら、非常に危険なことだ。要するに、中国系アメリカ人の科学者が、アメリカの科学技術業界の中で重要な地位を占めているから、仮に取られているとしたらアメリカはどうすることもできない」との考えを示した。
国際ジャーナリストの山田敏弘氏は「中国は80年代くらいから”情報を支配した者が世界を制する”という認識のもとやってきている。たとえばGoogleが作った知的財産を中国が盗んで自国の企業に渡し、それを製品として出す。しかも中国は半値くらいの値段で出すので、競争にならない。ファーウェイにもかなりお金を出して、世界シェアを広げるように後押しをした。だから他の企業はついてこられない。実際、5Gに関して技術力を持っている国やメーカーは少なく、基地局やデータを介する機械ではファーウェイがシェア1位だ。2位はエリクソン、ノキア。その次はZTEという中国企業で、アメリカの企業は全然入っていない。これからおそらくトランプ大統領が大統領令を出して、アメリカの企業はファーウェイを排除する方向に行くと言われている」と指摘。
「任CEOは情報を盗むことはしていないと言うだろうが、できる・できないとは別問題だ。オーストラリアのセキュリティ会社でトップをやっていた友人に聞いたことがあるが、2014年の段階で、かなりのデータが中国に漏れていることに気づき、調べてみたらファーウェイ製の機械を経由していた。問い詰めると、”メンテナンスのためにアクセスしている”と。もう一つエチオピアにあるアフリカ連合の本部から毎日0〜2時の間に中国に情報が漏れていた。調べてみたら、これもインフラの機械をつけたのがファーウェイだった。誰かがコンピューターの前に座って情報を抜いたというわけではないので、状況証拠だと言えばそれまでだが、これがサイバーの世界の難しいところだ」と警鐘を鳴らした。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)