“アメリカの声”とは~戦後70年にわたる日米の「共犯関係」!(2)
新外交イニシアティブ代表・弁護士 猿田 佐世 氏
2020年4月17日
誰も日本人のことなど興味もないし考えてもいないのです
――本題に入ります。日本に影響を与える“アメリカの声”の多くは「日米外交の舞台」であるワシントンから届きます。「ワシントン拡声器」とはどのようなものですか。
猿田 日本の新聞にはアメリカの情報がたくさん載っています。主要新聞のトップ記事がアメリカ、ということも実に頻繁にあります。私たちは、ニュースのみならず、ハリウッド、ディズニーなどアメリカの情報に囲まれて生活しています。それで「アメリカ人も日本のことに関心がある」などという錯覚が起こります。しかし、実際に、アメリカに行ってみれば「誰も日本のことなど考えていないし、興味ももっていない」という事実に直面し、衝撃を受けることになります。
では、一般国民でなく、政策をつくっている政府や政治家はどうなのでしょうか。日系2世・3世や米軍として日本駐留経験のある人を除けばほとんど状況は同じです。私が代表を務める新外交イニシアティブ(ND)では、日米の国会議員の面談設定を頻繁に行っていますが、「何で、日本の政治家が私に会いたいの?」というリアクションもアメリカ側からはしばしばです。悲しくなるほどアメリカ人は日本に無関心で、アメリカには、日本についての報道もほとんどありません。
私は「アメリカで対日外交に関心を有し、実際に政策決定に影響力を持つ人は何人いると思いますか」という質問を日米の政府関係者や研究者に繰り返してきました。その答えは一番少ない回答では5人、一番多い回答でもたった30人です。
「沖縄の人口は2,000人ぐらいか」の発言に唖然としました
驚くかも知れませんが、私が2009年12月にアプローチした米下院で沖縄の問題を議論する外交委員会、アジア太平洋環境小委員会(現・アジア太平洋委員会)の委員長だったエニ・ファレオマバエガ下院議員(当時)は、沖縄基地問題に関する会話のなかで「沖縄の人口は何人か」「2,000人ぐらいか」と私に聞きました。私は唖然としてしまいました。しかし、こうしたワシントンのエピソードはいくらでもあります。
では、日本に伝わる「沖縄・辺野古に基地を!」「兵器の爆買いを!」「原発推進を!」などの「典型的なアメリカの声」はどこから来るのでしょうか。それはアメリカの人々の総意やマジョリティの意見ではなく、ある特定の、いわゆる「知日派」と呼ばれるアメリカ・ワシントンの官僚や研究者の意見に過ぎません。
「アメリカの声」は日本政府や大手メディアに選別される
「ワシントン発」の声は、日本人の声であっても、アメリカ人の声であっても、ワシントンという「拡声器」によって大きく拡大されて日本に跳ね返ってきます。このようなワシントンの効用を私は「ワシントン拡声器」と呼んでいます。このワシントンの影響力を理解している日本政府や大企業は、ロビイストやシンクタンクに情報や資金(時には億単位)を提供しています。ある報道がなされた時、その背景には「その情報を日本に広めたい」とする日本人や「知日派」の米国人などの何らかの意図が必ず働いています。このように「アメリカの声」は、日本人の手も加わったかたちでつくり出され、日本政府や日本の大手メディアに常に選別されて日本に流されます。逆に、彼らが日本に流したくないと思う情報は日本に届きません。
(つづく)