“アメリカの声”とは~戦後70年にわたる日米の「共犯関係」!(3)

“アメリカの声”とは~戦後70年にわたる日米の「共犯関係」!(3)
新外交イニシアティブ代表・弁護士 猿田 佐世 氏
2020年4月18日

行動すれば日米外交ですら変えることができると認識いただけた
――今までお話いただいた現在の日米外交を改善するために先生は新外交イニシアティブ(ND)を立ち上げられました。NDとはどのような組織なのでしょうか。

猿田 私が日本とアメリカの外交チャンネルを広げようと動き出して10年が経ちます。シンクタンクである新外交イニシアティブ(ND)は今年で創立7年目を迎えました。NDの掲げる理念は以下の通りです。

劇的な変貌を遂げる国際社会において、アジア・太平洋地域の平和的かつ建設的な外交関係の構築は世界の平和と安全保障そして持続的な発展にとって重要課題です。米国やアジア・太平洋諸国と日本との関係も少しずつ変わりつつあり、また、日本の政治状況も風雲急を告げています。今こそ、米国・日本を含むアジア・太平洋各国間に多様で重層的な信頼関係と相互理解が築かれなければなりません。国際関係が限られた声によってのみ影響される現状が続くことは、それぞれの国の国益を損ね、地域全体の平和と安定を脅かしかねません。このような考えに基づき、私たちは、政府間外交/議員外交/知識人外交/民間経済外交/市民社会外交などマルチトラックによる「新しい外交=New Diplomacy」の推進を提唱します。

米軍基地・日米地位協定・原子力政策・安全保障・領土問題・歴史認識問題・TPP・朝鮮半島核問題など、これまで幅広いテーマを取り扱ってきました。これらの問題について政策提言を行いながら、オルタナティブな外交チャンネルをつくっていくことを目標にしています。

具体的には、提言書の作成、米国政府・連邦議会への政策提言のための直接の働きかけ(ロビーイング活動)、日本の国会議員・地方公共団体・企業や専門家をアメリカの議員や専門家とつなぎ、面談や会議を行ってともに政策形成を行うといったことをしています。また、アメリカの専門家などを日本へ招聘したり、日本の問題について海外メディアへの取材等の働きかけ、あるいは、国内外でのシンポジウム・研究会の開催も行っています。

活動を通じて得た最大の成果は、日本政府の外交方針に懸念を持つ日本の国会議員の皆さんや市民社会の人々に「行動すれば日米外交ですら変えることができる」と認識いただけたことかと思っています。これまでは、リベラルな考えを持ち現状の日米外交を批判するような立場の人々でも、それ自体を変えようと動く人はほとんどいませんでした。アメリカとのパイプをもっている人もいませんでした。私は日米間のつながるべき人がつながり、直接話し合いをしていけば多くのことは変えていけると思っています。地位協定などがその典型です。国内には自民党議員も含めて不満があるようなテーマでも、今は日本政府がアメリカに変えることを求めたことすらないことも多いのです。しかし、日本がきっちり求めさえすれば、ごく一部の問題を除いて、その多くは必ず実現できると私は確信しています。

(つづく)

 

猿田佐世氏(さるた・さよ)

ND代表・弁護士(日本・ニューヨーク州)・立教大学講師・沖縄国際大学特別研究員。
 早稲田大学法学部卒業後、タンザニア難民キャンプでのNGO活動などを経て、2002年日本にて弁護士登録、国際人権問題等の弁護士業務を行う。2008年コロンビア大学ロースクールにて法学修士号取得。2009年米国ニューヨーク州弁護士登録。2012年アメリカン大学国際関係学部にて国際政治・国際紛争解決学修士号取得。大学学部時代からアムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ等の国際人権団体で活動。ワシントン在住時から現在まで、各外交・政治問題について米議会などで自らロビーイングを行うほか、日本の国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。たとえば、2015年6月・2017年2月の沖縄訪米団、2012年・2014年の二度の稲嶺進名護市長、2018年9月には枝野幸男立憲民主党代表率いる訪米団の訪米行動の企画・運営を担当している。
 著書として、『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』(角川新書)、『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』(集英社)など多数。