【東京】シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」は26日、日本の安全保障戦略を考える緊急シンポジウムをオンラインで開催した。米中対立が戦争に至らないようにすることが喫緊の課題とし、日本は対中封じ込めと防衛力強化に頼る抑止論一辺倒ではなく、多国間連携を進める安全保障戦略に転換すべきだとする政策提言を発表した。沖縄に関しては、米海兵隊の態勢が変わる中、膨大な経費を必要とする辺野古新基地建設は取りやめ、米軍基地の県外分散を進めるよう提言した。
提言は、米中対立が軍事衝突に発展すれば日本は地理的に最前線になるとして、地域の緊張を高める日本への米軍のミサイル配備に反対し、敵基地攻撃の禁止など自衛隊の運用に歯止めを設けるべきとした。沖縄への過重な基地負担は日米同盟の「不安要素」とし、県外分散とともに日米地位協定の改定を訴えた。
提言は、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏、中京大学国際学部の佐道明広教授、元東京新聞論説委員の半田滋氏、ND代表の猿田佐世弁護士の4人がまとめた。シンポジウムで柳澤氏は「抑止論は戦争を辞さないことを前提とした考え方である。だが、国内では『ミサイルがあれば他国に攻撃されない』と誤解されている」とし、抑止力一辺倒な考え方を変えるよう訴えた。半田氏は、日米防衛協力指針(ガイドライン)改定や安全保障関連法などで米軍の後方支援を可能にしてきた経緯を説明した上で、「米国の戦闘に巻き込まれれば、第一列島線上にある日本は(中国の)中距離ミサイルの餌食になる。第二の沖縄戦は間近に来ている。米軍一辺倒でいいのか、(日本の)政治家は考えないといけない」と強調した。