広島「原爆の日」に際し、核兵器禁止条約に批准せず「立場の異なる国々の橋渡しに努めたい」と述べる日本政府に対し、猿田佐世ND代表が締約国会議への参加を求めた上で、「具体的な道筋を示すのが政府の役割だ」と語った記事が8月6日付の東京新聞(夕刊)に掲載されました。
広島の平和記念式典で「平和への誓い」を朗読する子ども代表に選ばれたのは、広島市立袋町小六年の伊藤まりあさん(12)と、同五日市東小六年の宅味義将君(11)。二人の身内に被爆者はいないが、家族や被爆者から話を聞き、日常の尊さを知った。「世界に生きる誰もが、心から平和だと言える日を目指し、努力し続けます」。被爆者の願いを次世代へつないでいくと力強く宣言した。
伊藤さんの母方の祖父は七十六年前の八月、米軍が原爆投下の候補地とした北九州市小倉にいた。母に教えられ、本などで詳しく調べると、天候不順などの偶然が重なって長崎に投下目標が変わったことを知った。「私は生まれていなかったかもしれない」。歴史でしかなかった原爆の存在が身に迫ってきた。
このことを英会話教室の外国人講師に伝えると、興味を示してくれたという。「多くの人に私の物語を伝え、原爆の恐ろしさを知ってもらうことが、私が平和のためにできることだ」と、英語の勉強にも励む。
宅味君は、原爆資料館や被爆者証言から原爆の恐ろしさを学んだ。今は新型コロナウイルスのため日常の自由を奪われ、殺伐とした社会の雰囲気も感じる。「平和は当然のものではない。みんなが心に余裕を持って協力し合えば、コロナも核兵器も解決できるはず」と信じている。
核兵器禁止条約の批准を首相に要望 被爆者団体
広島の被爆者七団体の代表らは六日、広島市内のホテルで菅義偉首相と面会し、核兵器禁止条約の批准を求め「一同の切なる願いです」と迫った。菅首相は「立場の違う国々の橋渡しに努めたい」と述べた。広島県原爆被害者団体協議会(県被団協)の佐久間邦彦理事長(76)は広島原爆による「黒い雨」訴訟の広島髙裁判決確定に触れ、原告以外も含めた早期救済を要請した。もう一つの県被団協の箕牧智之理事長代行(79)は原爆で親を失った孤児への弔意を具体的な形で表すよう求めた。
具体的道筋示して シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」猿田佐世代表の話
核兵器禁止条約が発効し、「核兵器は違法」と宣言された意義は大きい。しかし、日本政府は核保有国と非保有国との橋渡し役になると言いながら、何ら行動が伴わず国際社会の信頼を失っている。締約国会議に参加し、率先して議論に加わることが「橋渡し」の一歩となる。世論調査では、条約参加を求める声が七割を超えた。政治が世論から乖離しており正当性を持たない。具体的な道筋を示すのが政府の役割だ。
(2021/8/6 東京新聞 夕刊)