研究・報告

【台湾調査】現地報告「台湾元副総統と研究者へのヒアリングを行いました」

9月29日、台湾現地調査1日目の様子をご報告します。

台湾松山空港に到着し、コーディネーターの方の案内のもと國立中正紀年堂と二二八和平紀年公園を訪れました。蒋介石の巨大な銅像が鎮座する紀年堂の1階には、蒋介石を称える展示がなされる一方、戒厳時期の言論統制に関する当時の資料も展示されています。

日本の植民統治から解放されて間もない1947年に発生した二二八事件の犠牲者は、その後の調査や資料から数万人に及ぶと推定されています。二二八和平紀年公園の碑文には、台湾行政長官・陳儀による施政の偏向や官吏の腐敗により民衆の不満が高まった背景から、直接の引き金となったタバコを販売する女性への暴行や翌日のデモ参加者への銃撃、全国に広がった民衆の怒り、陳儀の求めに応じ蒋介石が台湾に派遣した兵による鎮圧・掃討作戦において死者・行方不明者が数万に及んだこと、そして半世紀に渡る戒厳令の下、この事件そのものがタブーとされ続けたことなどが刻まれています。


[写真] 二二八和平紀年公園の碑文

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専門家へのインタビューについて、最初にお会いしたのは、陳水扁政権下で副総統を務めた呂秀蓮氏です。呂氏は台湾で唯一、副総統を2期8年間務めあげました。

「台湾有事は日本の有事」といった言説の誤解や、決して戦争に至らせてはならず、日米を含め外からの刺激が危険を及ぼすこと、両岸関係は当事者である中国と台湾が解決できるとする具体的展望をシェアしていただきました。

トランプ政権下による国際情勢の不安定にも話が及び、西欧や米国の覇権ではなくアジアが世界をリードするMake Asia Great, Amen!=“MAGA”の発想を紹介されました。東アジア諸国が共同して軍縮を進めることによって世界の軍事化の潮流を断ち、非武装中立地域とする安全保障の枠組みを構想するもので大変参考になりました。また、台湾と沖縄の今後の連携の在り方などについても確認することができました。


[写真] 台湾元副総統の呂秀蓮氏

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次に、「メディアの援助」という観点からメディア研究をしておられる天主教輔仁大学新聞学科の林鴻亦副教授にヒアリングを行いました。林先生からは、台湾の民意に与える中国からの影響の有無や内外の情報操作によって繰り広げられる認知作戦の実態についてお話を伺いました。また、諸外国が台湾社会に抱くイメージが作為的なものである可能性について言及しておられました。報道や選挙戦におけるサプライチェーンの存在やエコーチェンバーのリスクは日本に置き換えても等しい問題意識を抱くところです。

お二人のお話から得た知見を活かし、引き続き充実した現地調査を行ってまいります。