研究・報告

偽りの負担軽減(下)(島村海利)

ND研究員/弁護士

米海兵隊は、平時には、米本土の海兵隊基地から6か月の部隊派遣プログラムで沖縄へ赴き、アジア太平洋地域の各国を巡回し、共同訓練を通して信頼醸成を図っている。具体的には、紛争地で逃げ遅れたアメリカ市民を救出する非戦闘員救出作戦を実施したり、海兵遠征隊(MEUと呼ばれる米海兵隊の中で最小規模の編成)を編成し、フィリピンやタイなどで人道支援、災害救難活動(HA/DR)を行ったりしている。有事には、艦船が佐世保などから沖縄へ向かい、一度沖縄で兵員、物資を積み込んでから現場へ向かうとされている。

2012年の米軍再編見直しにより、在沖海兵隊の多数がグアムやハワイ等へ移転し、沖縄には、1つのMEUと司令部が残ることになった。そもそも沖縄には海兵隊を運ぶ艦船や大型輸送機は配備されていないため、海兵隊にとっての沖縄は艦船と部隊が落ち合う「ランデブーポイント」という位置付けである。

字数の関係から、ここでは沖縄に海兵隊を残し、ランデブーポイントすることの是非は置く。しかし、これが現在の海兵隊の運用であることを前提とすると、海兵隊が使用する施設・区域はランデブーのために必要な限りで残せば十分ということになる。すなわち、その他の施設・区域は上記目的の達成のためには必要のない施設であるといえ、であれば、それらは無条件で返還されるのが日米地位協定の文言に適う。

この在沖海兵隊の運用に基づく視点は、北部訓練場についても当てはまる。

海兵隊「戦略展望」

加えて、海兵隊が今後の戦略についてまとめた「戦略展望2025」では、今回返還される部分の北部訓練場が“unusable”――すなわち「使用に適さない」こととされていることも忘れてはならない。使用に適さないのだから、施設としての必要性を認めるのは困難である。つまり、今回返還されようとしている区域は、海兵隊のランデブーのために必要な施設といえないどころか、そもそも米軍の視点からも必要のない訓練場であった。

しかし、この必要のない訓練場の返還にも、前記のように、①北部訓練場の残余の部分から海への出入を確保するため、土地及び水域を提供すること、②へリコプター着陸帯を、返還される区域から北部訓練場の残余の部分に移設すること、という条件が付けられている。①で提供された宇嘉川河口部分の水域及び土地は、その周辺で唯一山が海に開けた場所であり、米海兵隊ウェブサイトに、宇嘉川河口部分とよく似た場所で、オスプレイらしき戦闘機がゴムボートを降ろしている様子が描かれている訓練予想図が掲載されていたとの報告がある。

現在、新設されるヘリパッドの一つであるG地区と宇嘉川河口を結ぶ歩行訓練ルートが建設されている。G地区は、那覇防衛施設局(現・沖縄防衛局)が2007年に作成した環境影響評価図書において、「米軍から運用上、……必ず必要との強い要望があった」とされた場所だ。

返還条件と現在の状況からすると、米海兵隊は、宇嘉川河口と北部訓練場を合わせて、オスプレイを使用した上陸訓練の場所を確保しようとしていると考えられる。やはり、高江ヘリパッド建設は、日米両政府による北部訓練場、ひいては在沖米軍基地の機能強化だったのであり、SACOの目的であった沖縄の負担軽減が、最終報告には反映されていなかったことを示す一例である。

面積だけでなく

一部区域の返還がなされるので負担軽減だとの指摘もあるが、高江のヘリパッドも含め、米軍施設・区域においては、事故の危険や騒音被害、森林伐採や土壌・水質の汚染、生態系への影響など様々な問題を伴う。真の負担軽減には、提供面積の減少に留まらずこれらすべての点が考慮されねばならない。先日のオスプレイの墜落事故でも明らかなように、基地面積を一部減少させても、基地があることによる沖縄の危険は改善されず、全体でみれば負担軽減とはいえないのが実情である。

SACO本来の目的であった沖縄の負担軽減のためには、少なくとも、必要のない施設・区域は移設条件なく返還し、基地機能を縮小させることだ。そもそも、なぜSACOが設置されたのかとの原点に立ち戻り、沖縄の真の負担軽減に向けた議論がなされねばならない。

(島村海利・しまむらかいと 新外交イニシアティブ研究員)

こちらの記事は、2017年1月12日に「琉球新報」に掲載されています。