研究・報告

地元が支持か 検証要求 米国防権限法案 成立を前に訪米(中)

【地元が支持か 検証要求 米国防権限法案 成立を前に訪米(中)】
(沖縄タイムス 8/26)

米連邦議会で審議中の国防権限法案。上院案に含まれる「米軍再編による配備計画を再検証せよ」との条文はさらに続き、さまざまなことを国防長官などに義務づけている。

この米軍配備計画の再検証(review)に当たっては有事対応能力、必要とされる費用、訓練のためのリソースなど、さまざまな角度から分析がなされねばならないと国防長官に要求。加えて「米軍のプレゼンスに対する受け入れ国、地域社会及び地域の人々の政治的支持」といった角度からの検証も求めている。

「地域社会及び地域の人々の政治的支持」という視点による検証。これはまさに、沖縄の人々が長年求め続けてきたものである。

思い返せば、5年ほど前の稲嶺進前名護市長との訪米行動の際にも、前市長は当時の国防権限法へ「新基地建設には地元の声を聞かねばならない、という条項を入れられないか」との働きかけを行っていた。

常に「受け入れ国=日本」の意思のみで決定され、地元・沖縄の声が無視され続けてきた辺野古基地建設。ここに「地域社会及び地域の人々の政治的支持」という文言が加えられていることは、この法案において決定的に新しい。

なお同条は、米軍再編に伴う軍事施設の建設についての最新かつ詳細な報告に基づく検証も求めている。これは辺野古基地建設の進捗報告を含むものである。

同条はこのような再検証を求めているだけではない。検証終了後15日以内に国防長官は、現在の米軍の配備計画をそのまま遂行するか、あるいは日本政府と協議しながら配備計画の変更を試みるか、いずれかを上下院の軍事委員会に通知しなければならないとしている。

加えて、国防長官に対し、再検証終了後120日以内に上下院へ、再検証の結果についての報告書の提出を義務づけている。

報告書には、配備計画変更の提言についての詳細な説明を記載しなければならないとし、例えば、現在のアラスカ、ハワイ、米国本土、日本、オセアニアにおける米軍駐留計画について、変更先の地をどこにするか(alternative locations)といった提言を含むことすら求めているのである。

なお、報告書の提出後120日以内には、政府監査院(GAO)にも報告書の作成を義務づけている。GAOは政府機関でありながら独立した監査機関で、これまでも辺野古に予定されている普天間代替施設の滑走路は、必要な長さを満たしていないといった指摘を行っている。

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寄稿の(上)(下)は下記タイトルからご覧いただけます。
【米軍再編 再検討求める 米国防権限法案 成立を前に訪米(上)】

【議員への働き掛け急務 米国防権限法案 成立を前に訪米(下)】

猿田佐世

ND上級研究員・弁護士(日本・ニューヨーク州)・立教大学講師・沖縄国際大学特別研究員・早稲田大学政治学研究科 公共経営専攻 「教育課程連携協議会」委員。

早稲田大学法学部卒業後、タンザニア難民キャンプでのNGO活動などを経て、2002年日本にて弁護士登録、国際人権問題等の弁護士業務を行う。2008年コロンビア大学ロースクールにて法学修士号取得。2009年米国ニューヨーク州弁護士登録。2012年アメリカン大学国際関係学部にて国際政治・国際紛争解決学修士号取得。大学学部時代からアムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ等の国際人権団体で活動。

ワシントン在住時から現在まで、各外交・政治問題について米議会等で自らロビーイングを行う他、日本の国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。2015年6月・2017年2月の沖縄訪米団、2012年・2014年の二度の稲嶺進名護市長、2018年9月には枝野幸男立憲民主党代表率いる訪米団の訪米行動の企画・運営を担当。米議員・米政府面談設定の他、米シンクタンクでのシンポジウム、米国連邦議会における院内集会等を開催。

研究課題は日本外交。基地、原発、日米安保体制、TPP等、日米間の各外交テーマに加え、日米外交の「システム」や「意思決定過程」に特に焦点を当てる。