研究・報告

反辺野古 全国で多数 識者評論

【反辺野古 全国で多数 識者評論 猿田佐世氏 新外交イニシアティブ事務局長】(沖縄タイムス 11/2)

知事選で沖縄の民意がこれ以上無いほど強く示された直後に、いとも簡単にそれを踏みにじる工事再開だ。

玉城デニー知事は「首相との対話を求めているにもかかわらず極めて残念」「引き続き対話によって解決策を導く民主主義の姿勢を粘り強く求めていきたい」と述べた。

安倍政権の特徴は、「モリカケ疑惑」にも象徴されるように、反対者に耳を貸さないというものである。十分な説明も対話もない。しかし、民主主義、特に憲法の下での立憲民主主義は単に「多数決で物事を決める」のではなく、その決定過程で十分に対話し、少数者の権利への十分に配慮することを前提としている。

そして対話とは話す機会をもてばよいというものでもない。相手の立場に立ち耳を傾ける。特に強者の側は、少数者の意見に理由があるのではないかと一度立ち止まって考える姿勢をもち話を聞く、というのが対話である。面談の機会を設けることは第一歩であっても、それだけで対話がなされたとは言えない。

詳細は割愛するが「辺野古が唯一の選択肢」という政府の立場については、既にさまざまな立場から異論が呈されているが、結局は「沖縄の声を聞く姿勢があるかどうか」だ。その姿勢さえあれば選択肢は他にいくらも出てくる。

仲井眞弘多知事の埋め立て承認時に日本政府が約束した5年以内の普天間閉鎖に向けた努力は何ら行われないまま、あと2ヶ月で承認から5年が経過する。自らは約束を守らず、その約束を前提になされた承認は有効であるとするのは姑息ではないか。

忘れてならないのは、辺野古反対は沖縄だけでなく、日本全体の声でもあると言うことだ。この間本土で行われた多くの世論調査でも辺野古基地反対が賛成を上回る。保守系の産経新聞・FNNの調査(8月)でも、設問が辺野古賛成へ誘導的であるにもかかわらず、反対が賛成を上回った。

沖縄の人々の本土の私たちへの最大の願いは、辺野古に反対する政治を本土で実現してほしい、ということである。今回の工事再開には、私たち本土の人間も自らの意思が踏みにじられたと怒りを外に発しなければならない。

猿田佐世(新外交イニシアティブ(ND)代表/弁護士(日本・ニューヨーク州))

沖縄の米軍基地問題について米議会等で自らロビーイングを行う他、日本の国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。2015年6月・2017年2月の沖縄訪米団、2012年・2014年の稲嶺進名護市長、2018年9月には枝野幸男立憲民主党代表率いる訪米団の訪米行動の企画・運営を担当。研究課題は日本外交。基地、原発、日米安保体制、TPP等、日米間の各外交テーマに加え、日米外交の「システム」や「意思決定過程」に特に焦点を当てる。著書に、『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』(角川新書)、『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』(集英社)、『辺野古問題をどう解決するか-新基地をつくらせないための提言』(共著、岩波書店)、『虚像の抑止力』(共著、新外交イニシアティブ編・旬報社)など。