研究・報告

知事権限、海外発信を

【知事権限、海外発信を】(琉球新報 12月13日)

最高裁が県の意見も聞かずに高裁判決を追認することは許されない。裁判は各段階で問題があった。福岡高裁は3月に県と国に円満解決への協議を求めたが、政府は協議せずに7月、県を提訴した。一審の福岡高裁は県の8人の証人申請を却下し、県側の意見を十分に聞かないまま結審した。安全保障に精通していない裁判所が専門家の意見も聞かず、国の主張を追認するのでは司法の独立が失われる。

和解条項で県は確定判決に従うと言ったが、それは前知事の埋め立て承認の取り消しを取り消すことについてのみの話だ。移設問題について全て政府に従うのでは、岩礁破砕や工事の設計変更などさまざまな許認可権限が地方自治体に与えられている法の趣旨が没却される。知事の許認可権行使を理由に国が損害賠償請求を検討しているとの報道もある。言語道断だ。

米国では判決が出たら問題は決着と考えている関係者も多い。県知事が今後の手続きの判断権を持つことやその都度長期の裁判になる可能性があることをもっと発信しなければいけない。国が強硬姿勢を続ければ20年続く事態がさらに長引く。

猿田佐世(新外交イニシアティブ(ND)代表/弁護士(日本・ニューヨーク州))

沖縄の米軍基地問題について米議会等で自らロビーイングを行う他、日本の国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。2015年6月・2017年2月の沖縄訪米団、2012年・2014年の稲嶺進名護市長、2018年9月には枝野幸男立憲民主党代表率いる訪米団の訪米行動の企画・運営を担当。研究課題は日本外交。基地、原発、日米安保体制、TPP等、日米間の各外交テーマに加え、日米外交の「システム」や「意思決定過程」に特に焦点を当てる。著書に、『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』(角川新書)、『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』(集英社)、『辺野古問題をどう解決するか-新基地をつくらせないための提言』(共著、岩波書店)、『虚像の抑止力』(共著、新外交イニシアティブ編・旬報社)など。