台湾有事と日米外交(下)危うい軍拡志向の政治

「いまのウクライナは明日の台湾」とのセリフに沖縄をはめ込むと、戦略的要衝マリウポリのように沖縄は壊滅することになろう。

米空軍は嘉手納基地に配備していたF15戦闘機を撤退させ、替りにF22 最新鋭機を本国からローテーション配備する。米軍は代替機調達までの暫定措置というが、一部米メディアは「沖縄は生き残れない」ためのリスク回避策と報じた。

自衛隊も与那国、石垣、宮古、うるま市勝連に12式ミサイルを配置する。12式は敵基地を攻撃できる長射程化が予定さている。さらに沖縄市にも弾薬などの補給拠点を置く。米軍基地に加え過密化する軍事拠点を敵対国は攻めつくすだろう。

米戦略国際問題研究所(CSIS)の台湾有事シミュレーションは、開戦時に9割の軍用機が地上で破壊されると予測。米本国から増派される戦闘機は滑走路の残骸を脇に片づけて着陸するが、即座に発進しなければ攻撃されるという。

この絶望的なシナリオを前提に進む自公政権の安保改定、ミサイル配備は沖縄の犠牲が織り込まれているということだ。

与那国島や那覇市で行われた防衛避難訓練には呆然とした。学校の机下に児童を隠し、公共施設に住民を集めることで敵の集中砲火を避けられるのだろうか。

若者はこの有事ムードを真剣に見詰めてほしい。自衛隊の人員構成はいびつで、一線で戦う兵士が少ない。政府は徴兵制の導入を否定するが、国防が優先され個の意思は封殺されかねない。

いま優先すべき政策は敵基地攻撃なのか。岸田政権は増税を含め、防衛費を向こう5年間で43兆円に膨らませる方針だ。

ちなみに全国小中学生の給食費無償化に必要な予算は年4386憶円。43兆円あれば向こう100年給食費をタダにできるほどだ。

筆者は衆議院議員だった2019年にフィリピンを訪ね、ドゥテルテ政権の安全保障担当大統領顧問と面談した。南シナ海で中国との領有権争いにどう対処しているかを知りたかった。

顧問はのっけから、「あなたは戦争できると思うか」と聞いてきた。

筆者が首を横に振ると顧問はこう語った。

「私は(中華料理の)飲茶が好きで、ハンバーガーもよく食べる。寿司もキムチもいいし、たまにはウォッカを楽しむ。それでいいじゃないか」。

補佐官は現実主義を端的に表現した。日本のような米国一辺倒ではなく、全方位外交から利益を最大化する。国を守る賢い知恵だ。

戦争を望む国民はいない。でも危機感を煽り、軍拡を志向する政治家はいつの時代にも存在する。冷静に現状を凝視したい。

生存するための現実的な選択は「戦争を回避する」以外にない。シンポジウムでは現状の危うさと戦争回避の具体的な方策を探る。

230216 沖縄タイムス3面

シンポジウム「戦争を回避せよー安保三文書改訂を受けて」は3月1日午後7時から北谷町のちゃたんニライセンターで開催。