【社説[辺野古代替案提言]計画見直しのうねりを】(沖縄タイムス 2/28)
米軍普天間飛行場の辺野古移設計画について検討してきた民間のシンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」は27日、那覇市内でシンポジウムを開き、辺野古に代わる代替案を明らかにした。
「辺野古が唯一の解決策ではない」「今こそ辺野古に代わる選択を」-シンポジウムに込められたメッセージは明瞭である。
単なる願望の表明ではなく、日米双方にとってのメリットにも配慮した具体的提言になっているのが特徴だ。
日米が合意した再編計画によると、沖縄の海兵隊のうち、主力の第4海兵連隊を含む約9000人をグアム、ハワイ、オーストラリアに移すことになっており、実戦部隊で沖縄に残るのは第31海兵遠征隊(31MEU)だけになる。
31MEU(2000人規模)は、長崎県佐世保に配備されている揚陸艦に乗ってアジア太平洋地域を巡回し、非戦闘員救出や人道支援・災害救援、各国との共同訓練などに参加している。沖縄には1年の半分程度しかいない。
代替案は、海兵隊の運用を見直し、31MEUの拠点を沖縄以外に移転することによって新基地を建設することなしに普天間返還を可能にする、というアイデアだ。
海兵隊が担ってきた人道支援・災害救援の活動を自衛隊も分担し沖縄に連絡調整センターを置くことや、同活動のため日本が高速輸送船を提供する、ことなども盛り込んでいる。
提言をきっかけに議論が深まり、辺野古に代わる解決策を求める声が国内外で高まるのを期待したい。
このような提言に対しては、「海兵隊がいなくなると中国が沖縄を取りに来る」「中国に誤ったメッセージを送ることになる」との疑問や批判が直ちに起こりそうだ。
そのような指摘は検証不可能なだけに一人歩きし、ネットを通して拡散しやすいが、柳澤協二・元内閣官房副長官補が指摘する別の側面を見逃すわけにはいかない。
「米国が海兵隊を中国向けに使う、そのために辺野古が必要という誤ったメッセージのほうが、はるかに危険だ」(26日付本紙)。
日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では尖閣を含む離島防衛は主として自衛隊が担うことになっている。 「中国の弾道ミサイルの発達で沖縄の米軍基地は脆弱(ぜいじゃく)になった」と、基地の分散化を主張するのはジョセフ・ナイ元米国防次官補である。「沖縄でなければ」という議論は成り立たなくなった。
翁長雄志知事は、来県した岸田文雄外相に普天間飛行場の県外移設や5年以内の運用停止など12項目の要望をまとめ、文書で要請した。
「辺野古移設に固執すると、今後の日米安保体制に禍根を残す」との翁長知事の指摘は、NDの提言とも基本認識で共通する。県も新たなステップを踏み出すときである。
反対を主張するだけでは建設を止められない。米世論を動かし計画見直しの機運を作り出すためには、辺野古に代わる選択肢を県が何らかの形で示す必要がある。