“アメリカの声”とは~戦後70年にわたる日米の「共犯関係」!(4)
新外交イニシアティブ代表・弁護士 猿田 佐世 氏
2020年4月19日
むしろ「自発的対米従属」の姿勢は加速度的に増しました
――明るい兆しが見えてきました。話は変わりますが、トランプ大統領になって「日米関係」に何か変わったことはありましたか。
猿田 トランプ大統領就任前(2016年春)に私はあるインタビューで「トランプ大統領になっても日米関係は何も変わらない」と答えました。では、約4年が経過した現在はどうでしょうか。
現場での日米外交を取り巻く人、外交のやり方などには、トランプ政権になってから、それなりの変化が見られます。従来、対日外交を支えてきたいわゆる「知日派」(リチャード・アーミテージ元国務副長官やマイケル・グリーン元NSCアジア上級部長など)といわれる人々がトランプ政権では役職に就けず、政権内に日本政府が頼れる知日派はいなくなりました。そもそも、トランプ政権では、多くの省庁において、重要な役職者が多数任命されないままにあります。
さらに、CSIS(『アーミテージ・ナイ報告書』を発刊)やブルッキングスといった長年日本が頼みの綱にしていたシンクタンクは、トランプ政権とのつながりがなく、以前ほど役に立たなくなりました。日本政府は、トランプ大統領に近いといわれるシンクタンク「ハドソン研究所」に多くの資金を投じて日本部をつくり、マクマスター前米大統領補佐官を日本部長に迎え入れました。その結果、先日、ハドソン研究所所長のケネス・ワインスタイン氏が次期駐日米国大使に決まりました。トランプ氏に近い人に接近したいと、日本政府は各州知事にあたったり、議員とコンタクトを取ろうとしたり、今までにないつながりを求めて必死です。
では日米関係、「アメリカに言われて、日本がそれに従う」に変化はあったのでしょうか。結論からいえばまったく変わっていません。反論もせず、自発的にアメリカに従属しようとしている構造もこれまでと同じです。むしろ、この「自発的対米従属」の姿勢は加速度的に増しています。そもそも、トランプ大統領は「日本のことなどどうでもいいと思っている」というのが、日米外交ウォッチャーの多くの一致した意見です。にもかかわらず、「友情」を唯一の方針として安倍政権は「抱きつき外交」を行っています。自らの外交方針を主体的に考えられる日本、私たちでなければなりません。
アメリカは日本にとって絶対的でなく、相対的な存在である
――時間になりました。最後に読者にメッセージをいただけますか。
猿田 「アメリカは日本にとって絶対的な存在ではない。相対的な存在である」ことを認識していただければと思います。このことを皆さまのそれぞれの分野でまたそれぞれのレベルで、発信を続けていただきたいのです。
これはアメリカとの関係を断ち切ることを意味するわけではなく、アメリカと日本の関係、アジア(中国や韓国など)と日本の関係を相対的に考えていくことを意味します。
また、外交に限らず、教育などでも、日本政府が適切な政策を実行しているかどうか判断できる目を養っていただければと思います。政府に任せ、批判なき状態では決して良い政治は行われません。
最後に読者の皆さんにお願いがあります。新外交イニシアティブ(ND)は皆さまのご寄付・会費に支えられて活動をしています。訪米1つとっても多額の費用がかかります。ぜひ、この新しい取り組みに皆さまのご支援をいただけますようお願い申し上げます。
(了)