米進歩派 沖縄に賛同 民主の大派閥に成長

バイデン政権への移行準備が始まった。バイデン氏は民主党予備選でも必ずしも人気が高かったとはいえず、勝利確実となったのは打倒トランプ氏で皆がまとまったからにすぎない。

世論調査で党候補者トップの結果も出していたサンダース陣営、すなわち進歩派(プログレッシブ)は、大統領選と同時に行われた議会選でも成果を出している。党中道派は民主党が下院で議席を減らしたことの責任を進歩派に押し付け攻撃しているが、進歩派側は、激戦州の大多数で勝利を収めており批判は不当と反発する。今後、党内の中道派と進歩派との争いが激しくなるだろう。

近年急成長した下院のプログレッシブ議連は100人近い議員(下院民主党は改選前232議席)を擁し、党最大派閥の一つとなった。米国内の若者に進歩的な考え方が急速に広まり、その熱心な選挙活動がサンダース氏を押し上げ、バイデン氏を勝利確実に導いた。情熱ある10代20代の姿が進歩派の未来を明るくしている。

サンダース陣営はバイデン氏の公約にいくつもの進歩的政策を織り込むことにも成功している。思えば10年前、軽視、いや蔑視すらされていたプログレッシブ陣営が、これほどの政治勢力となったことには驚くほかない。

筆者は米政界に辺野古の新基地建設反対の声を届ける活動を10年以上続けてきたが、同議連の少なくないメンバーは沖縄の声に強く賛同する。

バイデン政権の外交担当の高官候補リストが出回っているが、オバマ政権そのものの布陣で、米軍基地問題について沖縄に寄り添う政策にはなりそうもない。

しかし、嘆いても仕方がない。トランプ政権下でも、本年6月には米下院小委から大浦湾の軟弱地盤に対する懸念が表明され、昨年には上院で沖縄を含む米軍再編の再検証を求める条文が可決されている。

米国でも闘いは進行中である。手を取り合える人たちと最大限協力しながら、声を上げ続けていこう。

猿田佐世(新外交イニシアティブ(ND)代表/弁護士(日本・ニューヨーク州))

沖縄の米軍基地問題について米議会等で自らロビーイングを行う他、日本の国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。2015年6月・2017年2月の沖縄訪米団、2012年・2014年の稲嶺進名護市長、2018年9月には枝野幸男立憲民主党代表率いる訪米団の訪米行動の企画・運営を担当。研究課題は日本外交。基地、原発、日米安保体制、TPP等、日米間の各外交テーマに加え、日米外交の「システム」や「意思決定過程」に特に焦点を当てる。著書に、『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』(角川新書)、『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』(集英社)、『辺野古問題をどう解決するか-新基地をつくらせないための提言』(共著、岩波書店)、『虚像の抑止力』(共著、新外交イニシアティブ編・旬報社)など。