研究・報告

核燃料サイクルと青森県 ―世界自然・文化遺産の地・北のまほろばからの提案―(ND Policy Brief Vol.12)

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                         青森県議会議員 鹿内博

1.はじめに

青森県内にある縄文遺跡群が、2022年7月に世界文化遺産に登録されました。1993年に世界自然遺産に登録された白神山地との世界遺産のダブル登録により、国内では数少ない、「世界に選ばれた青森県」となりました。

青森は「北のまほろば」とも言われています。リンゴ等の「食」やねぶた祭等の「文化と歴史」は県民の自信であり、誇りであり、故郷への愛着の証しでもあります。私たちは、先人から受け継いだ豊かで美しく平和な「北のまほろば青森県」を次の世代に引き継ぐ責務を果たさなければならないと思います。

2.青森県の核燃料サイクル施設、原発の現状―国内最多の原子力施設立地集中地域

まず、県内の核燃料サイクル施設の現状について報告します。1984年4月、電気事業連合会は核燃サイクル3施設、すなわちウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、そして再処理工場の立地受け入れを青森県に要請し、翌年、県知事はそれを受諾しました。その後、海外からの返還高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の一時貯蔵施設が追加され、この施設はすでに操業しています。また、海外返還低レベル放射性廃棄物の一時貯蔵施設の設置も計画されています。さらに、MOX燃料加工工場も建設中で、これは2024年上半期に竣工予定です。これらに加え、青森県むつ市で使用済み核燃料の中間貯蔵施設が事業開始予定となっています。つまり、当初は3施設だったのが、7施設に増えたことになります。

その他に、旧原子力船「むつ」から発生した、放射性個体廃棄物の保管施設、それから東通原発、さらに大間原発(フルMOX燃料)があります。これらはいずれも青森県下北半島に集中しています。その要因はいくつかあげられますが、六ヶ所村の場合、旧むつ小川原巨大開発の失敗による土地、或いは借金の穴埋め的な形で、核燃料サイクル施設が集中立地されました。

3.青森県の不安と課題

次に、核燃料サイクル施設や原発に対する青森県の不安、そして課題について申し上げます。

(1)放射性廃棄物の長期保管、最終処分地化への不安

国は青森県の不安、或いは課題を払拭するために、関係閣僚と知事との核燃料サイクル協議会を機会あるたびに開催して参りました。また知事も関係閣僚と面会をして説明を受けていますが、県民の不安あるいは課題は解消されるどころか、むしろ増えています。一言でいえば核のゴミの最終処分地になるのではないか、それが一番大きな不安であります。

具体的には、第一に、2045年4月25日までに搬出約束の返還高レベルガラス固化体が長期保管され、ひいては実質的な最終処分地になるのではないかとの不安です。同様に返還低レベル放射性廃棄物についても同じです。これらの一時貯蔵期間は30年から50年とされていますが、残りは23年4ヶ月余りです。高レベル放射性廃棄物の最終処分場は調査・建設で約30年必要とされていますが、まだ候補地も決まっていません。スケジュール、設計図、あるいは安全審査の基準もできてない状況であります。なお、海外からの核のゴミが青森県に搬入されるのは、六ヶ所再処理工場が操業すれば、この工場から高レベルと低レベル放射性廃棄物が発生をするのだから、返還廃棄物も六ケ所村へ、という理由付けがなされています。

第二に、六ヶ所再処理工場由来の高レベルと低レベル放射性廃棄物の長期保管、そして実質的な最終処分地化への不安です。六ヶ所再処理工場の操業が進まない場合も、各原発から運び込まれ、同工場で保管されている使用済み核燃料の長期保管、そして最終処分地化の不安があります。ちなみに、事業者(日本原燃)は県及び村と、再処理事業の実施が著しく困難となった場合、使用済燃料の施設外搬出を含め、対応をするという覚書きを交わしています。

むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設は、現在、東京電力と日本原電の二社から受け入れることになっていますが、これら以外の電力会社の共同利用化が浮上しています。こちらも使用済み核燃料が再処理されなければ、長期保管、そして実質的な最終処分場化への不安があります。さらに大間原発からは使用済みMOX燃料が排出されますが、これが再処理をされずに長期保管、そして最終処分地となるのではないかという不安。東通原発でもプルサーマルが始められるとすれば、同様の不安が生じます。

さらに、東通、それから大間原発も含め全国の原発が廃止・解体されて発生する放射性廃棄物の長期保管、そして実質最終処分地化も懸念もされます。原発の廃止・解体によって発生する低レベル放射性廃棄物については、国は2040年から処分を始めるとしていますが、まだ処分地は決まっておりません。一方、1984年に電気事業連合会が青森県に示した低レベル放射性廃棄物の処分施設には、原発廃止解体廃棄物も含まれるとあります。そのため六ヶ所低レベル埋設センターで、それらが処分されるのではないかとの不安が募っています。

このように青森県に再処理工場があるから、また低レベル放射性廃棄物埋設センターがあるから、つまり核燃サイクル施設があるからとの理由で、次々と様々な核のゴミが搬入され、また搬入されようとしています。

(2)安全性に対する不安

もう一つの大きな不安は再処理工場、MOX燃料工場、あるいは原発の安全性に対する不安であります。これは払拭されておりません。基本的に、原子力事業者と国の安全確保に対する不審があります。具体的には、再処理工場のガラス個化技術が未確立であること、アメリカ軍三沢基地等の航空機の衝突、そして活断層の存在といった、社会的・自然的要因による事故への不安です。加えて、再処理工場から大気中と海中に放出されるトリチウム等の放射性物質の影響と風評被害等に対する不安もあります。不安はその他にもありますが、省略します。

4.青森県から見る核燃料サイクルの実態と矛盾

では、これらの不安はどこから発生しているのでしょうか。不安の元となっている核燃サイクルの実態と矛盾について幾つか指摘したいと思います。

第一に、1984年4月に核燃料サイクル施設立地要請があった際の電気事業連合会、事業者、そして国の説明と約束が、そもそも実現不可能であることです。具体的には高速増殖炉、いわゆる「夢の原子炉」を実用化し、プルトニウムを利用するという核燃料サイクルの実現は困難です。そして青森県を高レベル放射性廃棄物等の核のゴミ捨て場にしないという説明もかなり難しい。現実に、既に低レベルの埋設センターが操業しています。さらに原子力施設の安全性を国と事業者で確保する、責任を持つというのも、福島原発事故等で確保できない状況が明らかになりました。そして核燃料サイクル施設は地域振興に寄与できるという点も、確かに一時的には、或いは一過性的にはあるとしても、元々県が求めてきたのは産業構造の高度化であり、それが核燃料サイクル施設立地への期待でありましたが、これも困難な状況にあります。

第二に、高速増殖炉を断念しプルトニウム余剰となり、さらには高レベル放射性廃棄物をはじめ核のゴミの処分地が確保できないにもかかわらず、核燃料サイクル推進と使用済み核燃料の全量再処理路線を続けるのは矛盾に矛盾を重ねているだけで、核燃料サイクルを国策、或いは国家プロジェクトとする根拠がないということです。まず、閣議決定、或いは了解事項である国の原子力開発利用計画、エネルギー基本計画、特定放射性廃棄物最終処分計画などの多くが実現をできていない。次に、プルトニウムの利用計画、高レベルの放射性廃棄物の最終処分計画のスケジュール、第二再処理工場計画、使用済みMOX燃料用の再処理工場の計画などについて、国民が理解し、信頼できる説明がほとんどないということです。高レベルの処分計画のスケジュール、これは本来新たに閣議決定をしなければなりませんが、その時期さえ未だにわからないという状況ですから、国策の体を成していないと申し上げざるを得ません。

第三に、核燃料サイクル政策の推進には国民の理解と協力が不可欠であるにもかかわらず、国と事業者に対する信頼が損なわれていることです。原子力施設の事故と事業者の不祥事、データ改ざんの続出や福島原発事故への補償、汚染水の海洋放出の決定、或いは北海道での高レベルの文献調査の開始、むつ市の中間貯蔵施設共同利用化計画等など、国や事業者が国民と約束をしたことを守らない、破っている。これでは、核のゴミの処分地を引き受けよう、或いは新たな原子力施設を認めようとする自治体はなくなります。このような状況で、核燃料サイクル政策の推進は不可能と申し上げたいと思います。

第四に、再生可能エネルギーの拡大と低コスト化で、核燃料サイクルを推進する前提が失われたということであります。それでも核燃料サイクルに国が固執するのは、使用済み核燃料も含めて、核のゴミの最終処分地を確保できないからであって、核燃料サイクルを口実或いは言い訳に問題を先送りにして、結果として青森県がその最大の犠牲者になろうとしています。

5.国、事業者に求めたいこと

私が国、或いは事業者に求めたいのは、仮にも国が核燃料サイクル政策を進めたいというのであれば、問題を先送りしないための決断をすること、そして国民に原子力事業の見通し等を説明し、原子力政策に対して国民の理解と信頼を得ることだと思います。まず、放射性廃棄物の発生見込み量や、最終処分の計画。次に、具体的なプルトニウムの利用計画、或いは第二再処理工場やMOX燃料用の再処理工場の計画も含めて、核燃料サイクルの全体像。三つ目に、核燃サイクルと使用済み核燃料の直接処分、そして再生可能エネルギーなどのコストとリスクの比較をすることです。

しかし、これらはこれまで出来なかったことであり、今さら感があります。したがって、今日求められているのは、政策転換です。具体的には、核燃料サイクル政策と使用済み核燃料の全量再処理政策を止めて、使用済み核燃料の直接処分に変更することです。すなわち再処理工場とMOX燃料加工場を取り止める。そして最終処分地の確保が困難な放射性廃棄物を増やさないために、原発の運転と新増設は止めるべきです。それには原発と核燃料サイクル立地自治体の理解と協力が必要ですから、電源三法交付金等の財政制度と核燃推進予算を、脱原発と脱核燃予算の仕組みと内容に変え、立地自治体の財政運営と地域振興を支える。加えて、使用済み核燃料の直接処分をはじめ、すべての放射性廃棄物の最終処分地の確保に、国が国民的課題として直接取り組み、特定の地域に、或いは自治体に犠牲を強いない、そういう政策に変えて頂きたい。他にもありますが、省略をさせて頂きます。

6.終わりに

今まで申し上げてきたように、核燃サイクル政策は必要なく、また実現不可能な政策であり、1日も早く脱原発、そして脱核燃サイクル政策に転換すべきです。核燃サイクル政策を口実に、使用済み核燃料や海外返還放射性廃棄物等の核のゴミがもたらす不安とそのリスクを、特定の地域、特に青森県に長く、強く強いるのは、絶対に回避して頂きたいと思います。問題を先送りせず、私たちの時代で発生した負の遺産は、私たちの時代で解決し、次の世代に押し付けるべきではありません。青森県は国策に協力することで地域振興を図ろうと、核燃料サイクル政策に協力をしてまいりました。しかし、その国策は実現をせず、真の地域振興の姿にもほど遠く、むしろ日本で最大の核のゴミ捨て場にされつつあります。当初、国と事業者から説明、約束をされた内容と現状はまったく違います。このことから、使用済み核燃料をはじめ、核のゴミの搬入を認めず、核燃料サイクル政策への協力を青森県として取り止めれば、国は核燃料サイクル政策を転換しなければならないでしょう。それが実現することを願って、私からの提案を終わらせて頂きます。

※本報告は2021年12月18・19日に開催された「英独米中韓日6ヵ国シンポジウム〈増えるプルトニウムと六ヶ所再処理工場―核燃料サイクルの現実と東アジアの安全保障―〉」に基づいています。内容と意見は報告者個人に属し、NDの公式見解を示すものではありません。

6ヵ国シンポジウム報告書<概要版>

※この企画は一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(abt)の2021年度助成金を受けています。