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辺野古の基地建設に反対する沖縄の声を伝えるための訪米活動報告(2017/7/12)

新外交イニシアティブ(ND)は、2017年7月10日より10日間、ワシントンを訪問し、辺野古の基地建設に反対する沖縄の声を伝えるための訪米活動を行いました。参加メンバーは、NDの報告書「今こそ辺野古に代わる選択を:新外交イニシアティブ(ND)からの提言」の執筆者でもある屋良朝博ND評議員(元沖縄タイムス論説委員)と半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)に加え、ND事務局より事務局長の猿田佐世(弁護士)とスタッフの松岡美里(博士(政治学・国際関係))の計4名です。
今回は、NDとして具体的な政策提言を携えて行う初めての訪米活動で、ワシントンのポリシーメーカーの方々からどのような意見が聞かれるか、大変興味深く各面談を行ってきました。

7月12日、午前中は屋良評議員と猿田、松岡で米議員との面談を行い、午後は到着したばかりの半田氏も加わって、アメリカのシンクタンク東西センター(East West Center)でシンポジウムを開催。夜は、元海兵隊の研究者とのディナーミーティングを行いました。下記、現地からの報告をご覧ください。

※なお、完成版の報告書は、下記よりご覧いただけます。
日本語版
英語版

初めに面会した共和党の重鎮議員の補佐官は、NDから事前にメールでお送りしていた報告書を読みこんで面談に備えていてくださったため、かなり踏み込んだ話をすることができました。同補佐官は空軍のパイロットとして嘉手納に駐留した経験もあり、人道・災害支援(HA/DR)の重要性を理解していると話し、それを重視するNDの報告書にも理解を示していました。また、辺野古の基地建設やその後の運用計画について、米政府の具体的な予算の割り振り、米議会の関わり方などの説明やアドバイスもいただきました。

続く、別の議員の補佐官面談では、冒頭に、去年、名護市長と面会したとの話がありました。また、辺野古基地建設は抑止力のためのものだという話があったため、それに対して、屋良氏から「抑止力の維持に重要と米政府が考えるのはむしろ嘉手納や横須賀だ」と説明。重ねて「HA/DRを行うための2000人の小さい部隊が主として使用するために、海を埋めたてて、基地を建設する意味はあるのか。これについてアメリカ側がどうお考えなのかを伺いたい」と質問しました。

午後は、ワシントンのシンクタンク東西センター(East-West Center)でのND報告書発表のシンポジウム”A New Vision for Okinawa and Asia-Pacific Security(沖縄とアジア・太平洋地域の安全保障の新しい展望)”を開催しました。50名ほどの方々が参加し、狭い会場に立ち見が出るほどの盛況となりました。

DSC02251シンポジウムでは、まず、猿田佐世ND事務局長が問題の概要や沖縄の現状の説明をしました。続いて、屋良朝博ND評議員(元沖縄タイムス論説委員)がND報告書の説明、すなわち、たった2000人の海兵隊の実戦部隊のために海を埋め立てて辺野古に基地を作るのは合理的でないこと、また、なぜ辺野古に基地建設をしなくとも海兵隊の任務遂行に問題は生じないと考えるのか、といったことについて説明しました。半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)は「抑止力」の問題について触れ、辺野古基地建設は抑止力維持に役立つものではないと指摘し、辺野古基地建設は不要と話しました。マイク・モチヅキ氏(ND評議員/ジョージワシントン大学教授)は、3人の発表を踏まえ、抑止力の考え方について安全保障や国際関係の専門家の中でも十分な理解がないこと等の説明を行いました。

その後の質疑応答では、沖縄での反対が強いのにも関わらず計画が変わらない理由、日米地位協定の問題点、基地がなくなった後の雇用についてなど、予定の終了時間を超過するほどの質問が出され、活発な議論が行われました。

シンポジウムには、アメリカ国務省のスタッフや国防総省のスタッフも来ていました。シンポ終了後に言葉を交わした国防総省のスタッフには、軍の役割には様々あって人道支援だけが任務ではない、というコメントをもらいました。もちろんその点についても私たちの提言は配慮しているため、ランチの約束をし、「さらに議論しましょう」といって別れました。

※シンポジウムの映像はこちらよりご覧いただけます(英語):

※シンポジウムについての報道はこちらをご覧ください:
【31MEU 県外移転提言 ND辺野古代案 米でシンポ】(7/14 沖縄タイムス)

【辺野古以外の選択肢を 「抑止力」に疑問 NDがワシントンで代替案シンポ】(7/14 琉球新報)

【辺野古移設の代替案提示 米首都で日本の専門家ら】(7/13 共同通信)

【辺野古中止を提言 普天間移設、米でシンポ】(7/14 西日本新聞)

1日目を終えてまず感じたのは、面談する相手が、沖縄の問題について一定の知識を持っていることが多くなってきたという点です。繰り返し行われている沖縄の訪米団の方々の努力が変化を与えているのだと実感しました。NDでは、設立前から8年間にわたり米国への働きかけを継続していますが、当初は沖縄の基地問題といっても全く知らない人がほとんどでした。世界中の問題が扱われる米首都のワシントンで、沖縄の基地問題への関心が高まっていること自体が、実に大きな変化と思っています。

もっとも、この問題の解決のためには、沖縄の人々の苦悩や問題の詳細を認識してもらうだけでなく、具体的な変化を導き出さねばなりません。問題を理解した米議員を次なる行動に移させるためには、沖縄の基地削減がアメリカにとってどの様にプラスになるのかを説明することが不可欠ですし、また、さらに広い範囲の人々、例えば、予算案の編成や海兵隊の運用に関わる人たちにも、辺野古の代替案を説明していく必要があります。NDとしても、こうした次の課題に備えたさらなる調査・研究を深め、具体的な変化を見据えた提言活動を行っていきたいと考えています。

NDでは過去3年、外交・防衛・安全保障の専門家らによる研究会を開催し、在沖海兵隊の軍事的な役割や「抑止力」の実態についての分析・研究を進めてきました。アメリカの専門家との意見交換も踏まえ、この2月、「辺野古が唯一の選択肢」という政府の主張への具体的な対案をまとめた提言「今こそ辺野古に代わる選択を -NDからの提言-」を発表しました。(執筆者:柳澤協二(ND評議員/元内閣官房副長官補)、屋良朝博(ND評議員/元沖縄タイムス論説委員)、半田滋(東京新聞論説兼編集委員)、佐道明広(中京大学総合政策学部教授))今回はこの報告書をワシントンで発表し、議会関係者や日米安保関係の専門家に辺野古が唯一の選択肢ではないと伝えるためにワシントンを訪問しました。

※報告書はこちらからご覧ください
日本語版
英語版

多くの皆様のご協力をいただきながらも、訪米行動を行えることはNDの強みだと自負しています。もっとも、このような活動を継続して行っていくのは本当に容易ではありません。常に経済的に厳しい状況が続いています。ぜひ、みなさまに資金面でのサポートをいただきたく心からお願い申し上げます。

皆さまにおかれましては、ご入会、ご寄付によるご支援により、この取り組みを支えていただければ大変幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

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口座名義 新外交イニシアティブ

書籍『辺野古問題をどう解決するか―新基地をつくらせないための提言―』(岩波書店 6/22発売)

沖縄の強い反発にもかかわらず、辺野古移設計画が強行されようとしている。 日本政府は米海兵隊の抑止力を強調し、同計画を「唯一の選択肢」とするが、 はたして本当か。筆者らは、米政府や軍関係者らを取材し、米海兵隊の運用実態などを緻密に検証。日本と沖縄の歴史、自衛隊や在沖米軍の活動の変容などを明らかにしながら、 新基地を建設させない具体的な政策を提言する。

執筆者
新外交イニシアティブ編、柳澤協二、屋良朝博、半田 滋、佐道明広、猿田佐世
目次
第1章 日本政府は沖縄に何をしてきたか、何をしていないか
第2章 沖縄・米軍海兵隊の実態を検証する
第3章 変わる自衛隊・米軍の役割
第4章 米国の抑止力のジレンマと沖縄
第5章 辺野古基地建設をめぐる米国の声
第6章 今こそ辺野古に代わる選択を――提言
発売日:6月21日
出版社:岩波書店
定価:1800円(税別)
Amazonでもご購入いただけます

※この提言の発表にあわせ日本で行った記者会見、シンポジウム(東京・沖縄・名古屋)などの様子は、沖縄タイムスや琉球新報、東京新聞だけでなく、The Japan TimesやStars and Stripes(星条旗新聞)などにも取り上げられています。
・沖縄タイムス(2/28)
・琉球新報(3/6)
・The Japan Times(5/8)
・Stars and Stripes(2/24)