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辺野古の基地建設に反対する沖縄の声を伝えるための訪米活動報告(2017/7/13)

新外交イニシアティブ(ND)は、2017年7月10日より10日間、ワシントンを訪問し、辺野古の基地建設に反対する沖縄の声を伝えるための訪米活動を行いました。メンバーは、屋良朝博ND評議員(元沖縄タイムス論説委員)と半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)、ND事務局長の猿田佐世(弁護士)とNDスタッフの松岡美里(博士(政治学・国際関係))の計4名です。
7月13日は、議会関係者(下院議員1名、下院議員の補佐官4箇所、上院議員の補佐官1箇所)との面談6件、その他シンクタンク研究者との面談2件、計8件の面談をこなしました。
下記、現地からの報告をご覧ください。

今回の訪米の主眼は、基地建設反対という沖縄の声を伝えるにとどまらず、普天間基地を閉鎖し、かつ辺野古移転を中止する場合の海兵隊の運用法を軍事・安全保障の視点から提言したNDの報告書を説明することにもあります。日米両政府が2012年に合意したいわゆる「米軍再編・見直し」によれば、沖縄の海兵隊の実戦部隊は多くが海外に移され2000人の31MEU(海外遠征隊)が残されるだけであり、その小さな31MEUが辺野古の新しい基地を使う予定になっていますが、多くの米議員・スタッフがこの認識をもっておらず、様々な質問が出されました。

まず外交問題を広く扱うシンクタンクの研究者と面会し、NDの報告書を説明しました。トランプ政権下の安全保障政策や東アジアの安全保障の情勢についても議論し、シンクタンク研究者から、NDの報告書をアメリカの海兵隊の人たちに説明したのかという質問もありました。

続くある議員スタッフとの面談では、議員自身が日米関係に関心を持っており、沖縄を訪問したこともあるという話があり、辺野古基地建設により生じる環境問題に懸念をもっているという意見がありました。他の議員スタッフからは、辺野古の基地建設の進捗具合についての質問があり、沖縄の米軍基地について、複雑で難しい問題だということを認識しているとの話もありました。

NDが訪米行動を行う際は、面談先議員のバックグラウンドや主義・主張、人的なつながりなども調査・分析をした上で、伝え方や提案内容を練り上げて面談に臨んでいます。ある議員のスタッフは、海兵隊にND提案についての考えを聞くべく、米議会にある海兵隊のリエゾンオフィス (Marine Corps Liaison Office)と話をしてみる、と言っていました。この面談の後に私たち自身でも、リエゾンオフィスを訪問しました。

廊下で日本語が流暢な下院議員に話しかけられ、その場で辺野古の状況について説明し、報告書を渡す機会もありました。

人権派として知られる下院議員と面会した際には、議員から5、6年前に軍事委員会(House Armed Services Committee)のメンバーとして、沖縄を訪問したことがあるとの話がありました。しかし、基地建設予定地で基地に反対する人々を見ることはなかったとのことで、沖縄県内における米軍基地の実情を断片的にしか理解していないようでした。基地建設問題についての認識については、日本政府の問題であり、沖縄の人たちの気持ちを理解はするが、米議会の側がどうサポートできるかわからないとの意見もありました。面談の最後には、「説得的な説明だった」との言葉もあり、こういった議員とうまく連携することが重要であると思いました。

議員スタッフ等の面談後、沖縄県ワシントン事務所を訪問し、今後の訪米活動などについて話し合いました。最後に、シンクタンクの研究者とディナー・ミーティングをし、ND報告書についての意見を聞くと共に、またそれに加えて、広く北朝鮮問題やその他の東アジアの安全保障情勢についても議論をしました。

全体として、沖縄の方々の訪米活動により、米議会での沖縄の米軍基地に対する問題意識は高まっているという印象を受けました。現政権において、経済や予算が一番の懸念材料だという意見もあったため、今後予算面の分析もしていこうと思います。

NDでは過去3年、外交・防衛・安全保障の専門家らによる研究会を開催し、在沖海兵隊の軍事的な役割や「抑止力」の実態についての分析・研究を進めてきました。アメリカの専門家との意見交換も踏まえ、この2月、「辺野古が唯一の選択肢」という政府の主張への具体的な対案をまとめた提言「今こそ辺野古に代わる選択を -NDからの提言-」を発表しました。(執筆者:柳澤協二(ND評議員/元内閣官房副長官補)、屋良朝博(ND評議員/元沖縄タイムス論説委員)、半田滋(東京新聞論説兼編集委員)、佐道明広(中京大学総合政策学部教授))今回はこの報告書をワシントンで発表し、議会関係者や日米安保関係の専門家に辺野古が唯一の選択肢ではないと伝えるためにワシントンを訪問しました。

※報告書はこちらからご覧ください
日本語版
英語版

多くの皆様のご協力をいただきながらも、訪米行動を行えることはNDの強みだと自負しています。もっとも、このような活動を継続して行っていくのは本当に容易ではありません。常に経済的に厳しい状況が続いています。ぜひ、みなさまに資金面でのサポートをいただきたく心からお願い申し上げます。
皆さまにおかれましては、ご入会、ご寄付によるご支援により、この取り組みを支えていただければ大変幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

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書籍『辺野古問題をどう解決するか―新基地をつくらせないための提言―』(岩波書店 6/22発売)

沖縄の強い反発にもかかわらず、辺野古移設計画が強行されようとしている。 日本政府は米海兵隊の抑止力を強調し、同計画を「唯一の選択肢」とするが、 はたして本当か。筆者らは、米政府や軍関係者らを取材し、米海兵隊の運用実態などを緻密に検証。日本と沖縄の歴史、自衛隊や在沖米軍の活動の変容などを明らかにしながら、 新基地を建設させない具体的な政策を提言する。

執筆者
新外交イニシアティブ編、柳澤協二、屋良朝博、半田 滋、佐道明広、猿田佐世
目次
第1章 日本政府は沖縄に何をしてきたか、何をしていないか
第2章 沖縄・米軍海兵隊の実態を検証する
第3章 変わる自衛隊・米軍の役割
第4章 米国の抑止力のジレンマと沖縄
第5章 辺野古基地建設をめぐる米国の声
第6章 今こそ辺野古に代わる選択を――提言
発売日:6月21日
出版社:岩波書店
定価:1800円(税別)
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※この提言の発表にあわせ日本で行った記者会見、シンポジウム(東京・沖縄・名古屋)などの様子は、沖縄タイムスや琉球新報、東京新聞だけでなく、The Japan TimesやStars and Stripes(星条旗新聞)などにも取り上げられています。
・沖縄タイムス(2/28)
・琉球新報(3/6)
・The Japan Times(5/8)
・Stars and Stripes(2/24)