研究・報告

韓国におけるパイロプロセシング(乾式再処理)(ND Policy Brief Vol.14)

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原子力コンサルタント、元韓国原子力安全委員会委員長

姜政敏(Jungmin Kang

1.韓国の原子力と使用済み燃料

韓国には、再処理施設はないが、日本と同じ権利を持ちたいと考えている。それで、20年以上に亘って再処理技術を追求してきている。「パイロプロセシング[パイロ=熱、プロセシング=処理]」(乾式再処理)と呼ばれる技術で、「韓国原子力研究所(KAERI)」が開発しているものだ。

図1(図はPDF版参照、以下同様)は、韓国の原子力発電所を示している。東海岸と西海岸に位置している。現在、24基あり、4基が建設中(2025年までに運転開始予定)だ。図2は、韓国の原子力発電設備容量を示している。原子力発電が始まったのは1978年で、現在建設中の4基は、2022年から2025年の間に運転開始予定だ。その後は、建設予定がない。だから、2080年代にゼロになる。この発電設備容量から発生する使用済み燃料は次の通りだ。1GWe(電気出力100万kW)の加圧水型原子炉(PWR)からは、年間20トンの使用済み燃料が発生する。だから、40年運転すると、800トンの使用済み燃料が発生する。PWRの数は閉鎖された1基と建設中4基、合わせて26基だ。想定されている寿命は新型炉が60年、それ以外は40年だ。26基すべてがその寿命を終えるまでの間に生み出す使用済み燃料は合計して約2万7000トンになる計算だ。

韓国には、「カナダ型重水炉(CANDU炉)」もある。CANDU炉で、年間100トンの使用済み燃料が30年に亘って発生するとすると、3000トンの使用済み燃料を意味する。CANDU炉の数は、閉鎖された1基も含め4基だ。これらの炉がその30年の寿命を終えるまでに生み出すCANDU炉使用済み燃料は、合計して、1万2000トンになる計算だ。

2.パイロプロセシングとKAERIの計画及びプロパガンダ

パイロプロセシング技術は、電気化学工程を用いて、使用済み燃料からプルトニウムを他のアクチニド元素と合わせて分離するものだ。この技術は、1980年代にアルゴンヌ国立研究所が統合型高速炉プロジェクト用に開発したものだ。KAERIはこの技術を使っていて、1990年代末から若干の修正をしている。KAERIがパイロプロセシングの研究開発を始めた時の主張は次のようなものだった。「今世紀末までに、使用済み燃料の蓄積量は11万トンを超えると予測される。このような大量の使用済み燃料の処分をするのに必要な地下処分場の面積は80平方キロメートルに達する。韓国でこのような広さの空地を探すのは極めて難しいだろう。パイロプロセシングと高速炉での再利用をすれば、使用済み燃料の体積と熱負荷が大幅に減少し、このような処理をしないで使用済み燃料を直接入れる場合と比べ、最終処分場の面積を100分の1にまで縮小することができる。この処理の後に残る放射性廃棄物の放射能が天然ウランのレベルになるまで崩壊するのにかかる期間は30万年ではなく、約300年になる。さらに、パイロプロセシングの生産物は、核拡散抵抗性を持つ。なぜなら、それは、核兵器にするには熱量においても、放射能においても、ホットすぎるからだ。」 (注1)

パイロプロセシングに関するKAERIのプロパガンダは、図3でも示されている。使用済み燃料の体積は20分の1になり、放射性毒性は、1000分の1に低減する、と。図4は、KAERI のパイロプロセシング工程の概略図だ。「加圧水型原子炉(PWR)」の使用済み燃料は、脱被覆後、酸化物が電解還元工程で金属に変えられる。金属状になった使用済み燃料は、電解精錬、電解採取の工程を経た後、プルトニウムとアクチニド元素が混合物として取り出される。この過程で放射性廃棄物が出てくる。すべて、高レベルだ。

KAERIの乾式再処理プログラムは、1990年代末に始まった。1997年頃だ。乾式再処理の研究開発が始まり、基礎的な乾式再処理研究開発が行われた。そして、2006年に、KAERI は米国と、「国際原子力パートナーシップ(GNEP)」プログラムの下、乾式再処理及び「ナトリウム冷却高速炉(SFR)」のパートナーシップを締結した。これは、2007年以来、国家研究開発プロジェクトとなっている。図5は、乾式再処理と高速炉に関するKAERI の元々の計画だ。この計画では、2030年代初めに1基の高速炉の運転を始めることになっていた。電気出力15万キロワットという小さなものだ。これに燃料を提供するため、PWRの使用済み燃料が乾式再処理されるという計画だ。2020年代の後半には、プルトニウムを使って高速炉の燃料の製造を始める。

しかし、放PWRの使用済み燃料の放射性毒性を1000分の1に減らすという目標を達成するには、1基のPWR当たり、同等の出力を持った高速炉が2基必要となる。韓国におけるPWRの運用状況を考えると、KAERIの目標を達成するには、電気出力100万キロワットの高速炉が12~13基以上必要となる。

3.乾式再処理の「効果」に関する誤謬

しかし、プリンストン大学のフランク・フォンヒッペルが乾式再処理の「効果」に関する誤謬を簡潔に説明している(注2)。プルトニウムの分離と使用は経済的ではない。プルトニウムの分離と核分裂は、地下深くに埋められた使用済み燃料の持つ元々小さなリスクを大幅に減らしはしない。分離済みプルトニウムは、直接利用可能の核兵器材料物質だ。したがって、使用済み燃料に入ったままにして、地下深くの処分場に埋めた方が良い。KAERIが主張している地層処分場の面積の縮小は、セシウム137とストロンチウム90を地表に何百年も置いておくことを必要とする。これらの放射性同位元素の99%が減衰するまで待つためだ。また、CANDU炉の使用済み燃料は、乾式再処理はされず、地層処分場に直接処分されることになる。再処理は軽水炉の場合でも経済性がないが、CANDU炉の場合、使用済み燃料に含まれるプルトニウムの量がずっと少ないことからさらに経済性が悪くなる。また、崩壊熱の放出量が小さい。だから、再処理のメリットとして謳われているものがまったく意味をなさないのだ。したがって、韓国は、いずれにしても、CANDU炉の使用済み燃料の直接処分と、乾式再処理の高レベル廃棄物の処分のための処分場を必要としている。

4.乾式再処理は核不拡散抵抗性を有しない

KAERIは、乾式再処理には「核拡散抵抗性」があると主張している。純粋なプルトニウムが生産物として出てこないからだと言う。しかし、パイロプロセシング(乾式再処理)は再処理であり、核拡散リスクを伴うと米国エネルギー省の報告書が述べている。米国の六つの国立研究所が作成した報告書だ。「本報告書は、目下注目されている特定の再処理技術の相対的核拡散リスクの評価の結果を提示する。今回の評価は、ピューレックス(PUREX)技術に対する三つの代替再処理技術――COEX、UREX+、パイロプロセシング――が、分離済みプルトニウムを生み出さないことから、ピューレックス技術と比べて核不拡散上の利点を持つか否かの結論を下すことに焦点を当てる。ピューレックス技術は、現在、再処理技術として使われているものだ。本評価の結論は、既存のピューレックス技術と比べ、核拡散リスクを減らす上でごくわずかの改善しか見られず、これらのわずかな改善は、主として、非国家主体に関するものだ、というものである。」

5.「共同燃料サイクル研究(JFCS)」の結果

韓国の「科学技術情報通信部[省]」の2021年9月1日の発表によると、米韓両国は、「共同燃料サイクル研究(JFCS)」の最終報告書(以下、「報告書」)を公式に承認した。乾式再処理の技術・経済性フィージビリティと核不拡散面での受容可能性を論じるものだ。しかし、韓国政府は、現在までのところ、「報告書」を公開していない。「報告書」は最近、乾式再処理検討委員会のメンバーらに特別に開示された。同委員会は、KAERIの乾式再処理研究開発を継続すべきか否かについて韓国政府に提言することになっている。最近の報道によると、検討委員会は、「報告書」の特定の結果について韓国政府に提言するという。しかし、現在までのところ、米国政府は、「報告書」を承認していないようだ。このことは、ごく最近、米国の数人の専門家から確認できている。だから、私は、「報告書」に関して何らかの事実を核国政府が隠しているのではとの強い疑念を抱いている。

6.韓国の標準使用済み燃料処分システム

韓国での再処理をめざす研究とは別に、KAERIは、使用済み燃料処分システムを長年に亘って研究してきている。図6は、直接処分に関する研究を示している。広さ2キロメートルx2キロメートルで、地下500メートルのものだ。PWRの使用済み燃料2万トンと、CANDU炉の使用済み燃料1万5000のトンを入れられる。冷却期間により、同じ場所で2万トンよりも大きな量のPWRの使用済み燃料を収容できる。KAERIは、また、改良型処分システムを開発している。二層式の処分システムで、これだと、元の計画より大きな量の使用済み燃料を収容できる。

7.結論

KAERIによる乾式再処理の正当化の議論は、使用済み燃料の体積、熱負荷、毒性を減らすことができるから、最終処分場の面積と毒性を低減できるというものだ。しかし、PWRの使用済み燃料のパイロプロセシングを採用するとしても、韓国は、高レベル廃棄物とCANDU炉の使用済み燃料のために地層処分場を必要とする。乾式再処理は、核拡散とテロのリスクを大きくするだけで、放射性廃棄物が環境に与える影響を減らさないうえ、多大なコストを伴う。だから、韓国は、使用済み燃料の管理のために乾式再処理を必要としない。

 

注1:Ref: Seong Won Park, “Why South Korea needs pyroprocessing,” Bulletin of the Atomic Scientists, October 26, 2009

注2:フランク・フォンヒッペルは、プリンストン大学上級研究物理学者、公共・国際問題名誉教授。1974年のインドの核実験後、再処理政策見直しのためにカーター政権が設置した委員会のメンバー。同政権による再処理推進策撤回の決断に大きく貢献。同大学の「科学・国際安全保障プログラム」を1975年に共同創設し、30年に亘り共同議長を務める。2006年、「国際核分裂性物質パネル(IPFM)」を共同創設し、最初の9年間共同議長を務める。1983〜90年、ゴルバチョフ大統領のアドバイザーだったエフゲニー・ベリホフと協力し、核実験の停止、核兵器用プルトニウム及び高濃縮ウランの製造停止、余剰核兵器用物質の処分などについて数々のイニシャチブを策定し成功に導いた。カーター政権以来、米国の政権や議会に対し核セキュリティー問題に関し助言。1993〜94年、ホワイトハウス「科学・技術政策局」国家安全保障担当次官として核脅威削減のための米ロ共同イニシャチブ策定に寄与。

 

※本報告は2021年12月18・19日に開催された「英独米中韓日6ヵ国シンポジウム〈増えるプルトニウムと六ヶ所再処理工場―核燃料サイクルの現実と東アジアの安全保障―〉」に基づいています。内容と意見は報告者個人に属し、NDの公式見解を示すものではありません。

6ヵ国シンポジウム報告書<概要版>

※この企画は一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト(abt)の2021年度助成金を受けています。