シンポジウムの概要
5月26日、政策提言を発表するシンポジウム 「トランプ政権とどう向き合うか -求められる日本政治の胆力-」が開催されました。
第2期トランプ政権の発足で、国際関係が大きく影響を受けて変貌する中、日米関係も変化を強いられています。関税交渉でもトランプ政権の意のままに日本を動かそうとする姿勢が日々目につきます。これまでの経験則が通用しない米国にどう向き合い、新たな局面を迎えた日米関係を受け、安全保障政策をどう変更していくべきなのか。こうした問題意識に立ち、政策提言を発表し、夏の参院選に向けて日本の課題を整理して議論しました。
各登壇者の発言レポート
会場となった衆議院第一議員会館「国際会議室」とズームを利用してハイブリッドで行われたシンポジムには、ND評議員で元内閣官房副長官補の柳澤協二氏、防衛ジャーナリストで元東京新聞論説兼編集委員の半田滋氏、中京大学国際学部教授の佐道明広氏、それに弁護士(日本・米NY州)の猿田佐世ND代表が登壇し、ワシントンからND評議員でジョージワシントン大学准教授のマイク・モチヅキ氏がオンラインで参加した。
提言の詳細はこちらをご覧いただきたい。
・政策提言(骨子・全文) https://www.nd-initiative.org/research/13294/
・シンポジウム全編動画 https://www.nd-initiative.org/research/13542/
・シンポジウム切り抜き動画 https://youtu.be/oErV66QrcUM?feature=shared
シンポでは、まず、柳澤氏が今回の提言の内容を概略的に紹介しつつ、説明した。トランプ政権が目指すものは何か、そのことによって世界的にはどのような影響が表れるか、米中関係と台湾問題などの東アジア戦略、日米同盟など、重要なテーマについて今回の提言で示された視点や分析について述べた。
モチヅキ氏は▽外交と安全保障政策の傾向▽その中でも特に中国政策や台湾問題▽日本との安全保障関係の3点でトランプ政権を読み解いた。具体的な政策に変動や矛盾が見られると指摘し、その理由として、ネオコンと中国封じ込めを強調する勢力、それに軍事介入に慎重な抑制派という3つの異なる視点が政権内に存在するとの見方を示した。また、トランプ政権の外交政策で確実なことは、1918年にウィルソン大統領から始まった米国のリベラルな国際主義を終わらせたことを挙げ「『革命的』な変化」と評した。
半田氏はトランプ政権の軍事面に焦点を当てた。ヘグセス防衛長官が3月に来日した際「日本は西太平洋で直面する可能性のあるあらゆる不測の事態の最前線に立ち、私たちは互いに支え合うために団結している」との発言から読み取れる日本の役割について語り、コルビー国防次官の指名公聴会での証言から、自衛隊が米軍指揮下に入る可能性を指摘した。
佐道氏は「日米安保体制と日本」と題して、日米安全保障協力の歴史的経緯や自衛隊と米軍の関係性、自衛隊の新たな指揮命令系統と米軍の連携などについて詳細な資料を使い、説明。日本各地に広がる特定利用空港・港湾の狙いについても論じた上で、日本の国家支出の中で防衛支出が着実に増えている様子についても報告した。
猿田氏は、トランプ大統領の同盟嫌いや予測不可能性を受け、日本の具体的議論に戦後初めて一定のアメリカ離れの傾向が出てきていることを指摘し、他方、政府はこれまでの日米同盟深化の方向に固執する抱きつき戦略に出続けるであろうと説明した。また、アメリカ離れを検討する層には日本独自の防衛力強化を求める人々と、防衛力は現状維持としつつ外交重視を求める人々がいるとの指摘をした。