10月1日、台湾現地調査3日目の様子をご報告します。
まず、台湾が「台湾有事」にどのように備えているかを知るため、中華民国国軍(台湾軍)の軍事戦略を指揮する立場にあった方と面談しました。具体的に考えられる侵攻のシナリオや、台湾本土において想定される「非対称戦」の内容についてお話を伺えました。軍事戦略以外にも、紛争を防ぐためには継続的なコミュニケーションが必要であることや、外交を含めた包括的な安全保障の在り方についてなど、多角的な視点からお話しいただきました。
その後、民進党の元主席であり、現在は政府系シンクタンクの代表を勤めている方のお話を伺いました。台湾の民主化にも関わった経験をもとに、共に強権的な政治が行われる米中両国への懸念や、武力に依らない両岸関係の平和を実現するためにどのような方策が考えられるか、また、日本はどのような役割を果たすことができるか等についてお話をしていただきました。

[写真]民進党元主席との面談の様子
午後は、イラクでの活動経験をもつ平和活動家の方と面談しました。現在の国際情勢を受け、「権力を抑制するはずの民主主義が、むしろ権力を拡大させている」との指摘がありました。また、台湾がイスラエル支持の立場をとる背景や両者の関係性など、中東情勢に詳しい活動家の方ならではの見解を聞くことができました。このような情報はなかなか日本のメディアからはアクセスできず、今回の調査旅行の意義を改めて実感しました。
その後、かつての馬英九政権の外交ブレーンを務めた方を含め、現在の国民党中枢で政治・外交政策に深く関わっている3名と面談しました。日本国内では国民党に対して「中国寄りで保守的」という見方が目立ちますが、中国との関わり方を熟知しているからこそ、衝突を回避し、緊張を下げるための現実的な対応ができるとの説明をいただきました。特に「独立」の姿勢を強める民進党政権下において両岸の公式な対話のチャンネルが途絶えている現在、実質的に国民党が両岸のパイプの役割を果たしていることや、”War Game(机上演習)”だけでなく、”Preventing War Game(戦争回避のためのシナリオプランニング)”が必要であることなどのお話をいただきました。

[写真]国民党中枢で政治・外交政策に関わる3氏との面談の様子
夜には、東アジア近代史の歴史的資料の収集をしている台湾の著名なジャーナリストの方を訪ね、同氏が運営している私設博物館でお話を伺いました。日本の植民地時代の様子がわかる色付けした資料写真の解説をしていただきながら、台湾人アイデンティティに関する話や、台湾や韓国から見た日本植民地時代の歴史認識の違いなど、様々なお話を伺いました。台湾では、「平和を求めている」と言うと「中国派」とラベルを貼られ、降伏主義者とみなされるという現状についても指摘をいただきました。館内には、歴史的価値の高い100年以上前の風俗写真や絵図、戦時中の軍服などが展示されており、台湾や北東アジアの歩みを視覚的に理解できる機会となりました。

[写真]現地のジャーナリストから日本植民地時代の台湾について解説を受けている様子