辺野古以外の選択肢を 「抑止力」に疑問 NDがワシントンで代替案シンポ

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【辺野古以外の選択肢を 「抑止力」に疑問 NDがワシントンで代替案シンポ】(琉球新報 7/14)

【ワシントン=座波幸代本紙特派員】元日本政府高官やジャーナリストでつくるシンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」は12日、米首都ワシントンの東西センターでシンポジウムを開いた。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画は沖縄県民に受け入れられないとして、県内移設ではない代替案を説明して提起した。代替案を作成したND評議員ら登壇者は、日本政府が進める新基地建設計画の「抑止力」に疑問を呈し、代替案の軍事的な合理性を強調しながら「辺野古以外の選択肢を考えるきっかけになる」と訴えた。

新外交イニシアティブ(ND)が辺野古代替案について説明、提案したシンポジウム=12日、ワシントンDCの東西センター
「沖縄とアジア・太平洋地域の安全保障の新しい展望」と題したシンポには、日本メディアや現地の研究者ら50人余が参加した。会場からは「代替案は日米政府に提案したのか」「基地の閉鎖・再編の経済への影響は」などの質問が出た。

ND評議員の屋良朝博氏は、在沖米海兵隊の前方展開部隊「第31海兵遠征部隊(31MEU)」の県外移転と、部隊と揚陸艦が合流する「ランデブーポイント(落ち合い場所)」を沖縄以外の場所へ変更するよう提案した。高速輸送船を日本政府が提供すれば海兵隊の機動性は高まり、各国との人道支援や災害救助部隊として位置付けることで「21世紀型の安全保障になる」と述べた。

NDメンバーで東京新聞論説兼編集委員の半田滋氏は、近年の自衛隊の増強を挙げ「日本全体の安全保障を見直す時期に来ている」と指摘した。2006年の日米合意で在沖米海兵隊司令部のグアム移転が決まったが、12年の見直しで移転は実戦部隊に変更された点について「日本政府の言う抑止力は、米政府の言うことを実現するための方便ではないか」と批判した。

ND評議員で米ジョージ・ワシントン大教授のマイク・モチヅキ氏は、北朝鮮の核ミサイル開発で緊張が高まる朝鮮半島の有事を念頭に、海兵隊を置くのは沖縄より九州が近くて有効だと指摘した。県民の反対の中、新基地建設を進めれば「沖縄の怒りは一層高まり、嘉手納基地の存在も危うくなるだろう」と述べた。

米首都から世論形成
参加者から意見相次ぐ

【ワシントン=座波幸代本誌特派員】「新外交イニシアティブ(ND)」はシンポジウムで、「辺野古が唯一」と新基地建設を強行する日米両政府の姿を米首都で伝えた。関心を持って聞き入る米国内の参加者を前に、登壇者らが新基地建設の実効性に疑問を呈することで、「辺野古以外の選択肢も可能」という世論形成を図る第一歩となった。

会場からは、「海兵隊を自衛隊とともに人道支援・災害救援に取り組む部隊に位置付けるという案について、もっと具体的な話を聞かせてほしい」と未来志向の質問があった一方、「沖縄で基地反対の選挙結果が何度示されても、日本政府が聞き入れないのはなぜか」と、日本の民主主義に対する疑問の声も上がった。

経済関係のコンサルタントをしているキャスリーン・デイビー・ミストリーさんは「基地の閉鎖・再編は雇用など地域経済への影響が懸念されるが、基地の見直しが必要な時もある。沖縄では観光が大きな産業に育っていると知った。新たな交渉や議論を始めるのは大事なことだ」と話した。

ジョージ・ワシントン大プログラムアソシエイトのミリアム・グリーンバーグさんは「米国で沖縄の問題について知識のある人は少なく、長く続いた考え方を変えるのは難しいだろうが、このような新しいアプローチは意義があると思う」と印象を語った。

今回のシンポには、米首都ワシントンから「沖縄の声」を日本に届けるという狙いもあった。会場には在ワシントンの日本メディアの記者らも多く訪れた。