【東京新聞 7/17】

日米原子力協定 残り1年 日本のプルトニウム再処理「特権」
議論避け自然延長か 原発6000発分 周辺国懸念

日米間で原子力関連の物資や技術に関する協力を取り決めた「原子力協定」が、十六日で三十年の満期まで残り一年となった。日本は協定の下、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理を自由に行える「特権」を与えられている。しかし、再利用のめどは立っていない。プルトニウムは核兵器にも転用可能なため周辺諸国から警戒されているが、協定は自然延長になるとの指摘がある。日米両政府が議論しないまま、日本はあてもなくプルトニウムをため込み続けることになりそうだ。(宮尾幹成)

■了承不要

日米原子力協定は一九六八年に発効し、八八年に改定された。旧協定は、再処理を実施・海外委託するたびに米国の了承を得る内容だったが、再処理の工程を含む核燃料サイクルの確立を目指す日本は改定で、了承が不要になる「包括事前合意」を取り付けた。当時のレーガン米政権が日米同盟重視の立場から、核不拡散に逆行すると反対論が強かった米議会を抑えた。

日本は九〇年代から、プルトニウムを再利用する高速増殖型炉もんじゅ(福井県)の実用化に向けた研究や運転を推進。一方でプルトニウムの蓄積を続け、新たな主力施設として六ヶ所再処理工場(青森県)の建設も進めた。

だが、もんじゅはナトリウム漏れ事故などトラブルが相次ぎ、昨年十二月に廃炉が決定した。核燃料サイクルは実現の見通しが立たず、プルトニウムは行き場を失った状態。まだ六ヶ所工場は稼働していないが、保有量は約四十八トンに上り、原爆六千発分より多い。

日本政府はプルトニウムに関し、国際原子力機関(IAEA)監視下での平和利用を強調しているが、中国は二〇一五年十月の軍縮に関する国連総会の委員会で「日本はすぐに核兵器を保有できる。核兵器開発を主張する声もある」と批判。韓国は米国に日本と同様の「特権」を求めている。今後の日米協定への対応次第で、日本のプルトニウムへの懸念や不満が国際社会に高まる可能性がある。

■シナリオ

協定は、改定する場合は日米間で交渉し、合意すれば国会承認などの手続きを経て更新する。満期までに合意できなかったり、改定しなければ自然延長となる。日本の外務省は満期に向けた対応について「引き続き米国と緊密に連携していく」と答えるのみで、方針を明らかにしていない。

日米外交に詳しいシンクタンク「新外交イニシアティブ」事務局長の猿田佐世弁護士は、両国政府が描くシナリオについて「あえて改定交渉せず、自然延長に持ち込もうとしている」と指摘。交渉すれば、プルトニウムの問題が国会などで焦点になりかねないため、両国政府とも議論を避けたい思惑があるとみる。

プルトニウムの増加に歯止めをかけようと、日本の国会では超党派の議員連盟「原発ゼロの会」を中心に、米議会と協力した両国政府への働きかけを模索する動きがある。メンバーの民進党の逢坂誠二衆院議員は「自然延長の場合でも、六ヶ所工場の稼働延期などを求めるべきだ」と強調。九月にも与野党議員で訪米し、米上下両院議員らと意見交換したい考えだ。