【沖縄タイムス 3面】

在沖海兵隊抑止に不要
寄稿 ND基地シンポ上

日米両政府が普天間の県内移設にこだわる理由は抑止力である。抑止力とは、一体何なのか。そして、海兵隊が沖縄にいることは、どういう意味を持っているのだろうか。

武力によって国家意志を他に強制することを戦争という。その能力を持つ国が我が国の意志を変えようとする動機を持つとき、我々は、それを脅威と呼ぶ。

抑止とは、より強い武力の示威によってその戦争の企てを抑圧することだ。それは、強い武力とそれを使う意志によって成り立つ。相手はもっと強くなろうとする。それを抑止するためさらに強い武力が必要になる。

抑止と称して目の前に軍隊をおけば、相手は戦争準備と受けとめ、先制攻撃の誘因となる。国家の対立は相互作用で、相手もこちらを恐れている。恐怖によって抑止が破られれば、兵力の所在地に攻撃が来る。それが米中であれば、米軍基地が密集する沖縄は、ミサイルの標的となる。

中国は、いかなる脅威なのか。真っ先に思い浮かぶのは、日本の領有に中国が異議を唱える尖閣だ。そこで、海兵隊が沖縄からいなくなれば中国に誤ったメッセージを送ることになる、と懸念する声がある。

一昨年改定された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では、離島防衛は主として自衛隊の役割とされている。2013年の防衛計画の大綱は、離島防衛には海上・航空優勢の確保が重要であると述べている。

離島防衛は自衛隊の仕事であり、しかも、相手が泳いで来るわけではないので、海上・航空の戦いになるということだ。

陸上自衛隊は、離島奪還作戦のため、長崎県を拠点とする3千人規模の水陸機動団を新設しようとしている。海上・航空優勢を奪われている離島にどうやって上陸するのか、理解できないが、米軍再編後に辺野古新基地を拠点に沖縄に残留する31海兵機動部隊以上の規模を持つ水陸両用戦部隊である。

それでもなお、海兵隊がなければ離島を守れないのだろか。仮に海兵隊が投入されれば、島をめぐる小競り合いの域を超えて米中の本格的武力衝突になる。その結末は、沖縄にミサイルが飛んでくるということだ。

中国向けの抑止のメッセージとは、米国が介入するということだ。だが、使われない海兵隊が沖縄からいなくなっても米国の意図が誤解されることはない。

むしろ、米国が海兵隊を中国向けに使う、そのために辺野古が必要という誤ったメッセージのほうが、はるかに危険だ。

柳澤協二

1970年防衛庁入庁、防衛研究所長を経て2004年内閣官房副長官補。現在、国際地政学研究所理事長・新外交イニシァティブ評議員