【Aera.dot 9/21】

1988年に米国と日本の間で結ばれた核燃料の調達や再処理、資機材・技術の導入などについての取り決めた条約、日米原子力協定。この満期を1年後に控えた9月10日~15日にワシントンを訪れ、問題を管轄する米国務省や上下院の外交委員会所属の連邦議会議員らと面談した猿田佐世弁護士がレポートする。

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「この問題は重要だ。私の方から国務省に質問しておきます」

「一緒にこの問題について発信していきましょう」

米連邦議会議員やその補佐官からの力強い言葉が続く。

これまで、沖縄の基地問題やTPPなど日米外交をめぐる様々な分野で米議会への働きかけを続けてきたが、今回ほど手ごたえが感じられるロビーイングもなかった。

現在私は、超党派の国会議員訪米団に同行してワシントンに来ている。日米原子力協定が来年満期を迎えるにあたり、これを契機に日本の核燃料サイクル、使用済み核燃料の再処理について米国に議論を促すための訪米団である。

現行の日米原子力協定は、日本に使用済み核燃料の再処理を包括的に認めるものである(「包括的事前同意方式」)が、来年7月に30年の満期を迎える。協定満期後に包括的事前同意方式が継続されないとすれば、日本は再処理政策の見直し、ひいては原発政策全体の見直しを迫られることになる。

核燃料サイクルはエネルギー資源の少ない日本において、将来にわたって限りなく電力を生み出すシステムとして「夢のサイクル」と言われ、国策とされてきた。もっとも、現在では、ウランの埋蔵量は当初の予測よりはるかに多いことが分かり、また、技術的にも経済的にも、核燃料サイクル構想には致命的な欠陥があることも分かっている。鍵となるはずの高速増殖炉「もんじゅ」は昨年廃炉が決定している。多くのプルサーマル炉の稼働停止が相次いだことも重なり、日本は47トンという膨大なプルトニウム在庫を抱えこんでおり、これは核兵器5000発分以上に相当する。来年に予定されている六ヶ所再処理工場の稼働が実施されれば、あらたに年間最大8トンのプルトニウムが分離され、さらにその在庫は増加していくことになる。

アメリカでは、使用済み核燃料の再処理とプルトニウムの蓄積は、核不拡散政策に反するとして、安全保障の観点から問題視されている。米国自身も、1970年代以降、商業用再処理を行っていない。日本の再処理やプルトニウム大量保有についても、政府高官を含め、米国の多くの専門家が懸念を表明してきた。他国にも保有のインセンティブを与え核不拡散の方針に反するし、中国・韓国といった日本の潜在的核抑止力を脅威と捉えかねない国々との緊張関係も生じうる、というのがその理由である。

もっとも、であるにもかかわらず、2018年の満期に際し、日米両国のいずれかが改定等を言い出さない限り、協定は自動延長になると規定されており、現在、日米政府は自動延長を前提にしているとみられている。

米側からも改定交渉を求めず、協定は自動延長となるだろうというのが米専門家の大方の意見である。「日本は重要な同盟国。その日本が死守しようとしている権限を奪おうとして、良好な関係にヒビを入れるべきでない」「日本はアメリカがいくら言っても変えない」というのがその理由であると説明を受ける。「どれだけアメリカに言われても政策を日本が変えない」というのは、我々日本人が普段持っている「米国からの圧力弱い日本」というイメージと真逆の事象であり大変興味深い。

とはいえ、日本で再処理に反対する立場からすれば、米国にはそれを援護射撃する人々が数多く存在するため、この人々との連携が極めて重要になる。今回は、米国内にくすぶっている日本のプルトニウム蓄積や再処理政策についての不満を、日本の現実的な政策転換への議論に結び付けられないかとして企画された訪米団であった。

この問題について知識が全くない人から、日本の原発でどこが再稼働されどこが審査待ちか、といったことまでつぶさに知識を持つ専門家まで、米議会一つ取っても面談を行う相手に濃淡はある。しかし、総じて、日本のプルトニウム大量保有や、六ケ所再処理工場稼働に懸念を示していた。

果たしてこのまま単純な自動延長によってこの2018年問題を決着させてよいのか。日本の再処理政策についてのオープンな議論が望まれる。(猿田佐世)