【琉球新報 12/7】

基地と安全は両立しない

 
辺野古新基地建設を強行する政府の論理は、①安保は政府の専権事項②沖縄の基地は抑止力③沖縄の地理的優位性の3点です。
 
軍事・外交は政府の仕事であって、他の誰にもやれません。しかし、それを支える国民の支持がなければ軍事も外交も機能しません。まして基地は、地元住民の生活に多大の影響を与える巨大な迷惑施設です。政府の専権事項であるがゆえに、政府に疑問を解消する責任があるという道理を忘れてはなりません。
 
抑止力とは、軍事力を見せつけて相手の戦争の意志を挫くことです。そのために兵力は多いほどよい。しかし、あまりに多くの兵力を見せつければ、相手国の不安を煽って戦争を誘発するリスクもあります。
 
戦争の原因となる対立があるから抑止がある。このやり方では、どこまでいっても安全はありません。対立を解消する展望がないまま抑止力にのみ頼るならば、基地がなくなることは永遠にありません。
 
地理的に優位かどうかは、目的があって言えることです。沖縄の位置は、中国を攻撃し、南シナ海で戦うためには都合がよい。しかしそれは、相手にとって脅威ですから、真っ先に攻撃される誘因にもなります。沖縄は、ミサイルの脅威にさらされる前線の島になります。
 
基地の島・沖縄が背負っているものは、事故、騒音、犯罪、環境汚染といった基地公害だけではないことが見えてきます。日米両政府が進める抑止一辺倒の政策の中で、最も戦場となるリスクを背負っているのが沖縄です。基地を本土で引き受けられない軍事上の理由も、そこにあります。
 
最近、北朝鮮のミサイルが日本人の不安を煽っています。北朝鮮が核とミサイルに固執する動機は日本を滅ぼすことではなく、アメリカの攻撃を防ぐことです。北朝鮮を滅ぼす能力を持った米軍がいるから、ミサイルで攻撃する誘因になるのです。基地によって、本土も沖縄と同じ前線の島になろうとしています。しかし本土では、Jアラートで避難が奨励されるばかりで、米朝対立の本質を直視しようとはしていません。
 
基地に明確に「NO」を突き付ける沖縄の民意は、沖縄の身勝手の表明ではなく、日本の国民全体が抱える「基地と安全の矛盾」に直結しています。戦争の不安をテコにした改憲論議が本格化しようとしている今日、沖縄の民意を途絶えさせてはならないと思います。
 
11日に名護市で行われるND主催のシンポジウムでは、基地を正当化する政府の論理への根源的な疑問を掘り下げていきたいと考えています。
 
柳澤 協二(元内閣官房副長官補・安全保障・危機管理担当)