【沖縄タイムス 12/8】

陸自配備 沖縄の視点で

 
「自衛隊版海兵隊」といわれる陸上自衛隊水陸機動団の三個目の連隊をキャンプ・ハンセンに置くとの一部報道があった。
 
小野寺五典防衛相は会見で否定したが、報道より前、筆者が陸上幕僚監部の担当者に聞いたところ、沖縄本島への配備は「ぜひやりたい」とのことだった。
 
解説が必要だろう。米軍再編を議論した二〇〇六年の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、沖縄の海兵隊司令部とその家族をグアムへ移転させることで合意した。
 
事件・事故を引き起こすのは実戦部隊の兵士なので、移転は実戦部隊とするよう入れ換えを求める声が沖縄から挙がったが、政府は「それでは抑止力が低下する」と門前払いした。
 
ところが、一二年の2プラス2で仰天の出来事があった。米側の要望により、移転の中身が司令部から実戦部隊に変更されたのである。あれほど強調した抑止力について、日本政府から何の説明もなかった。
 
この見直しにより、キャンプ・シュワブの第四連隊はグアムへ、キャンプ・ハンセンの第一二連隊はいずこかの海外へ移転する。ふたつの基地から実戦部隊が消えるものの、基地は一平方㍍も返還されない。
 
一方、来年三月に発足する水陸機動団の任務は離島奪還にある。司令部と二個連隊を置く予定の九州の長崎県よりも沖縄本島から出動する方が離島までの到達は早い。陸幕の担当者が空き家となる米軍基地の一部を利用したいと考えても不思議ではない。
 
欠けているのは基地負担に苦しむ沖縄の視点である。米軍基地に自衛隊を上乗せすれば基地が固定化されるのは自明だろう。
 
もうひとつは虚構がバレた抑止力の問題である。政府は宮古島、石垣島にミサイル部隊の配備を計画している。基礎体力を増し、さらに沖縄本島に水陸機動団という跳躍力を持たせて自衛隊を沖縄防衛の要にしようというのだ。
 
そうだとすれば沖縄に残ることになる唯一の実戦部隊の第三一海兵遠征隊を抜きにしても十分な軍事力が確保できるのではないか。そもそも年に数カ月しか沖縄にいない彼らのために辺野古新基地を提供する必要があるだろうか。
 
沖縄の多くの人々が願うのは「基地のない平和な沖縄」であろう。政府には沖縄の声を防衛計画に取り込む度量が求められる。海兵隊すべての実戦部隊の海外移転を進め、自衛隊の配備計画を抑制的な方向に見直す必要がある。
 
抑止力を軍事力のみでとらえていては基地問題は解決しない。政治、経済、文化など多面的な交流を通じてはじめて実現する他国との良好な関係にまで抑止の概念を広げ、平和国家ならではのモデルをつくらなければならない。