【沖縄タイムス 12/9】

唯一の選択肢 論拠なし

 
11月に那覇市内で起きた海兵隊員の飲酒死亡事故に対する抗議決議をめぐり、県議会は「海兵隊撤退」を明記するかどうかかで紛糾した。自民が「撤退」に反発し、結局、「県外・国外移転」への修正で落ち着いたのだが、いったい何が違うのだろうか。
  
県外(本土)か国外へ海兵隊を移転させることを沖縄からの撤退という。原因と結果に他ならない。県議会の全会派が事実上の“撤退決議”に合意したことになるのだが、どうも議論がかみ合っていない。
 
海兵隊が撤退すると安保に悪影響を及ぼすとの漠然とした懸念がある。尖閣諸島をめぐり中国と領有権争いがあるのだから、米海兵隊の沖縄駐留を不可欠だとする意見も根強い。
 
しかし北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)で米本国を狙う時代に、沖縄の地理的優位性論は説得力を欠く。特に機動性に富む海兵隊なら、九州、あるいはグアムなどへ移転しても運用、任務遂行に支障はないはずだ。
 
在沖米軍基地の7割を占有する海兵隊が他所へ移転すれば、辺野古埋め立ての必要はなくなり、基地問題は大幅に解消する。沖縄問題の解決には海兵隊の撤退→県外・国外移転が不可欠だ。
 
保革の違いを超え、安保上の必要も念頭に現実的な解決策を議論したい。さらに基地従業員の雇用確保、高齢化が進む地主対策を盛り込んだ実施計画を早急に検討すべきだろう。安保と経済は解決策の車の両輪であり、いずれも欠くことはできない。
 
前者の基地問題は政治、後者の返還跡利用計画は行政が責任を負う。沖縄の未来を切り開くビジョンを県民に提示してほしい。
 
新外交イニシアチブ(ND)は3年を費やし安保、軍事専門家が海兵隊の撤退・移転を検討、その成果を今年2月に沖縄で発表。ワシントンでも9月にシンポジウムを開催するなど解決策を提起した。
 
内容を詳述する紙幅はないが、海兵隊の運用、任務、そして米軍再編で決まったグアム、ハワイ、豪州などへの分散移転を念頭に、沖縄から移転しても運用に支障は生じないとの結論に至った。
 
米軍再編によって海兵隊の実戦兵力(地上部隊)は現在の2個連隊の約6000人から大隊規模の800人に大幅縮小。任務は人道支援、災害救援、非戦闘員救出作戦など紛争未満の事態対応に限定される。比較的小ぶりな部隊の沖縄撤退・移転要求は日本の安保政策、日米同盟に変更を求めるものではない。
 
政府が主張する「唯一の選択肢」に論拠はない。 安保上も軍事的にも合理性があるのなら、撤退、県外・国外移転を追求するため、あらゆる可能性を検討すべきだが、現状は思考停止状態だ。
 
「撤退」か「移転」かの論争ではなく、具体的な解決策を議論したい。海兵隊のための辺野古埋め立てが「解」になり得ない。シンポジウムでその論点を明確にする。
 
(屋良朝博 元沖縄タイムス記者)