【来年は選挙イヤー 翁長知事ら「オール沖縄」は安倍政権に勝てるのか?】(Aera.dot 12/7)
猿田佐世ND事務局長
このところ、連日、沖縄に電話をかけ続けている。来週予定している沖縄県名護市における辺野古基地建設についての大型シンポジウムの準備である。来年2018年は沖縄の選挙イヤーであり、秋口には名護市議選、年末には沖縄県知事選を迎えるが、まずは2月4日に名護市長選挙がやってくる。
筆者は、「今の外交が届けない声を外交に届ける」という取り組みをしており、その柱は「沖縄の声をアメリカに伝える」というものである。現名護市長である稲嶺進氏とも、ワシントン訪問をご一緒させて頂き、米政府や米議会などに声を届けるお手伝いをしてきた。今回のシンポは、稲嶺市長もお呼びし、その「沖縄の声」が日本の政権与党の影響を受け、沖縄の中でも埋もれてしまわないようお手伝いができれば、と企画したものである。
多くの沖縄の方々と電話口で様々な打ち合わせをしながら、沖縄の現状についても意見交換をしていると、改めて今現在の沖縄の空気感が伝わってくる。「沖縄の声をアメリカに運ぶ」という取り組みをしながら、本土出身であり本土に生活する私にとって、この時々の沖縄の空気感を正確につかむことは大変重要であり、常に意識的に気を配らなければならない点である。
辺野古基地建設反対を掲げる「オール沖縄」陣営は、4年前の2014年の名護市長選挙で稲嶺市長を再選させ、名護市議選で勝利を収め、知事選で翁長雄志知事を誕生させた。その後、辺野古基地建設に直接関わる自治体における選挙では国政選挙でも地方選挙でも、負け無しできていた。
沖縄の選挙は、たとえ人口数万の小さな市の選挙であっても国政に大きく影響する。本土与党である自民党は、全国の各選挙で勝利を収めていても沖縄でこのような状態が続いていることを大変に苦々しく思い続け、一致団結する沖縄を死にものぐるいで崩そうと取り組んできた。4年前の名護市長選挙でも、6万人の地方の小さな街の選挙に、自民党からは選挙応援に小泉進次郎議員や石破茂幹事長(当時)が送り込まれた。石破氏は「名護市に約500億円規模の振興基金を立ち上げる」とすら発言した。「金で沖縄を買うつもりか」と強い反感を地元の人たちから買ったこともあり、4年前の選挙では、稲嶺進氏が大差をつけて再選されている。
もっとも、その後も自民党は懸命に切り崩しを図り、沖縄県内各市の首長選挙で反「オール沖縄」の候補者を当選させてきた。また、2018年選挙イヤーの前哨戦となったこの10月の衆議院選においては、沖縄に4議席ある小選挙区のうち、米軍基地と関係の薄い宮古島など離島の影響もあって、自民党側が一議席を奪いかえしている。
さて、2018年の沖縄の選挙はどうなるか。
この衆院選で「オール沖縄」が一議席を落としたのは、保革を超えて集まる「オール沖縄」陣営の象徴ともいえる、翁長知事と同じ政治的背景を持つ元自民党の保守派であった。今後、「オール沖縄」側の鍵となるのは改めて保守層をどのくらい取り込めるか、という点である。
名護市長選、沖縄県知事選については「オール沖縄」側の現職である稲嶺進市長、翁長雄志県知事への有力な対抗馬は見当たらないと話す人もいるが、国も既成事実を作るべく強引に辺野古の護岸工事を進めており、来夏には埋め立てを本格的に開始しようとしている。工事を後戻りできないようにし、あきらめムードを広めたい、というのが国の戦略と言われている。
なお、「オール沖縄」陣営は、圧倒的に優位な立場にある本土や東京に対してその意思を強く示すために、大差で勝利を収めねばならないという現実もある。
本格的な埋め立てが来夏なら、今、これを跳ね返すことがとても重要である。基地問題を抱える沖縄にとってのみならず、その沖縄の状況や、現在の日米関係や東京と沖縄の関係に懸念を持っている本土の我々にとっても極めて重要である。
日本本土には、沖縄のたたかいに元気をもらっている人々も少なくない。私も、沖縄の基地問題は日本とアメリカの関係の歪みから来るもので、自分自身の問題だと捉えており、元気な沖縄にいつも励まされている。
本土の人間として沖縄に恩返しをしたいと思う。500億円の提示などできるわけもないけれど、何か協力できることはないか、と、また電話口に戻るのである。(弁護士・猿田佐世)