旭日旗、竹島上陸、慰安婦財団解散…日韓のトラブル、なぜ次々と再燃?

【旭日旗、竹島上陸、慰安婦財団解散…日韓のトラブル、なぜ次々と再燃?】(AbemaTIMES 11/14)

日本と韓国が抱える火種は徴用工問題だけではない。先月、済州島で行われた国際観艦式では、韓国政府が海上自衛隊の旭日旗を”植民地支配の象徴だとして掲揚の自粛を要請。艦艇がその国の海軍旗を掲げるのは国際的なルールということもあり、防衛省は韓国側の要請を拒否。岩屋防衛大臣は「自衛隊旗については、自衛隊法等の国内法令により、艦尾への掲揚が義務付けられている。今回残念ながら我が国として国際観艦式への参加を見送らざるを得ない」と述べ、参加を取りやめた。

さらに10月22日には韓国の国会議員13人が日本固有の領土である竹島に上陸。しかも彼らを移送したのは、ソウル地方警察庁のヘリコプターだったという。これに対し菅官房長官は「竹島領有権に関する我が国の立場に照らし、到底受け入れられない」と指摘。超党派の領土議員連盟も公開質問状の送付を決定した。

そして10月24日には慰安婦問題を担当する韓国の大臣が”慰安婦財団の解散”を示唆した。日本が10億円を拠出して設立された財団は、2015年に慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意の根幹だ。

安倍総理は2日の衆院予算委員会で「未来志向の日韓関係構築に向け、協力を累次確認してきたにも関わらず、韓国主催観艦式の問題や韓国国会議員の竹島上陸、あるいは韓国大法院判決など、それに逆行するような動きが続いていることは大変遺憾だ」と述べている。今後も、韓国による”ちゃぶ台返し”は繰り返されるのだろうか。

10日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元韓国特命全権大使の武藤正敏氏は「日韓関係は、政治と歴史問題以外は非常に良い。本当に日本が嫌いだったらこんなに観光客が来るはずないし、小説もベストセラーにはならない。物の考え方や生活習慣も似ているから感覚も近い。だから売れるのだろう。本来は最も仲良くなれる国同士。だけど政治が悪いとこうなってしまう。今から20年前に立ち返ると、金大中大統領が小渕総理と戦略的パートナーシップを結んだ。

金大統領は相当悩んだらしいが、日本が文書で謝罪と反省をすることを条件として、政府与党レベルでは歴史問題についてもう言いません、とした。それはつまり、日本が民主主義国家になったことを認めたということだった。韓国に勤務していた立場からすると、韓国では常に”戦前の亡霊”が蘇り、なかなか物事が前に進まない」と振り返る。

「誰も軍国主義に戻ろうとは思っていないのに、それを常に言い立てている人がいる。青瓦台も非常に政治的な、過激な思想を持っている人たちが牛耳っていて、全てをコントロールしているところに問題点がある。そもそも韓国の基本的な考え方は、日本から得た資金での補償という側面もあるが、それによって経済を発展させることで、より多くの国民が被益するというものだった。自分たち努力して補償もするという発想は非常に良かったと思うただ、各国からの経済協力は報道されても、日本の経済協力だけは報道されず、隠してきた。そこに問題がある。日本がした良いことも客観的に見るようにすれば、こんなに感情的な反発をしないで済む。

たとえば韓国の浦項(総合)製鉄を作る時、どこも協力してくれなかった。そこで朴泰俊さんという人が、新日鉄の稲山会長を尋ねて協力を依頼した。すると稲山さんは、”韓国を植民地にしたんだから、日本としてできるだけのことを協力すべきだ”とおっしゃった。そして、通常の製鉄所を設立するよりもはるかに色々な協力をした。そんな新日鉄に対し恩を仇で返すような判決はどうなのか。みんな歴史を知っているのだろうか。私は韓国を離任するとき、国務総理にも外務大臣にも”日本が協力してきたことを感謝してくれというつもりはない。しかし、それを知ることによって、韓国はもっと素直に、客観的に日本を見られるようになるのではないか。その方が韓国政府にとって得ではないか”と言った。日本は我慢強いが、一度ブチ切れると過激になる。今はそういう状況だと思う。

■韓国国内に右傾化への警戒心?

東海大学教授の金慶珠氏は「植民地として日本の戦争で一緒に戦わされてきた歴史もあるが、日本と韓国は1965年の基本条約を通じて、良好な関係を築いてきた。ここまでうまくいったのは稀だと思う。ただ、戦後の国際政治の中で、韓国と日本は協力することがお互いにとって国益だった。しかし冷戦も終わり、何が何でも協力しないといけないという時代が過ぎると、溜まっていた様々な不満が出てきた。とくに韓国政府によって植民地時代の清算が十分になされていないことについて、日本からそれを指摘する発言が聞こえてくると、途端に反日的な世論になる。

ここ数年、日本への観光客はものすごく増えているし、韓国人は日本に親近感もあって大好きだが、”過去において我々を植民地化した日本”という別物のイメージも存在していて、そこに火がつくと一気に燃え上がる。ここ10年くらいの日本の動きに対し、次第に右傾化しているのではないかという警戒心がメディアや政治にはある」と話す。

「韓国が自らの歴史をどのように位置づけ精算していくのか。政権によってどのようなスタンスで見るのかという解釈の違いがあるため、政権が変わると今までのことがひっくり返る。私は今回の判決には非常に問題があると思うが、韓国政治の流れを見てみると、民主化の過程の中で一度は出されるはずの判決だったし、韓国の保守政権が蓋をしてきた問題だ。行政府がゴリ押しで日本に何かを要求するとか、新日鉄の資産を差し押さえるということまでいかないように、色々と案を練っているだろうと思う。私が心配しているのは、日本で一気に嫌韓論が吹き荒れ、韓国の中でも一気に反日の世論だけになることだ」。

■「お互いに何をやりたいかというビジョンがない」

弁護士の猿田佐世氏は「今回の判決の問題で残念に思うのは、韓国では日本との関係を懸念する意見など、様々な見方が出てきている一方、日本ではエキセントリックと言っていいような反応しかない。人権問題として考えようとか、かつて不法行為をしたのは日本だから、という発言ができないような雰囲気になっている。仲良くしないといけない国同士で、国交断絶なんてできるわけはないのに、大人の対応ができないのは国力が近づいてきたというところもあって、日本にゆとりがなくなってきたと思う」と指摘する。

これについて、元外交官で自民党衆議院議員の松川るい氏は「ずっとそうしてきた」と反論。

これについて、元外交官で自民党参議院議員の松川るい氏は「(植民地支配は)決して許されるものではなかったが、日本による朝鮮半島への多くの投資があったことや教育水準を引き上げたということも事実。徴用工の問題についても、そもそも1965年に日本が個人への補償もしましょうか提案した時に、韓国政府が”いや、全部ください。私たちがやるので”と言ってきた経緯がある。当時は1ドル=360円の時代なので、5億ドルというのは韓国の国家予算の約2倍だった。本来、戦略的にも利益を共有すべき日韓関係なのに、どうしてこういう問題が次々と出てくるのか。

おそらくそれは、韓国にとって日本がそれほど大事ではないからではないか。アメリカとは軍事同盟があるし、中国は大きな市場で怖い。しかし日本は今や一人あたりGDPもほとんど同じ。経済的な優先度も低い。お互いに何をやりたいかというビジョンもない。だからこそこういう問題が出てきてしまう」と指摘していた。
(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)