論壇 半田滋 保障されぬ「知る権利」 民主国家の原点 沖縄で問う

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【論壇 半田滋 保障されぬ「知る権利」 民主国家の原点 沖縄で問う】(沖縄タイムス 3/17)

千葉県の陸上自衛隊木更津駐屯地で続いていた定期整備が終わり、1機目のオスプレイは5日、普天間飛行場に戻った。整備は一昨年2月に始まった。防衛省は木更津市に「1機あたりの整備工期は3、4カ月」、ただし初回は「9月上旬まで実施」と説明していたから、予定より1年半も延びたことになる。

防衛省は、整備員の不慣れと部品や工具が米国から届かなかったことが原因としているが、「内部がサビだらけで部品の交換に思いのほか時間がかかった」と話す関係者もいる。そんな機体が飛んでいたのかと不安になる。

2機目は昨年6月から整備を開始し、すでに9カ月が過ぎた。「整備工期は3、4カ月」が現実となる日は来るだろうか。

オスプレイは普天間配備から5年も経たないうちに2機が墜落などで失われ、乗員3人が亡くなった。エンジン不調による予防着陸も頻発している。重大事故にあたるクラスAの事故率は10万飛行時間あたり、3・24で、米海兵隊機全体の2・72より高い。これが普天間配備前に防衛省が「安全」と太鼓判を押したオスプレイの現状である。

昨年7月には、配備された24機のうちの8機を米国から運んできた8機と入れ換えた。山口県の岩国基地で船積みしたから見つからないとでも思ったのか、8機一斉交換の事実を防衛省、在日米軍とも公表せず、双方に事実を指摘しても交換した機数すら明らかにしていない。
政府を「信用しろ」という方が無理だ。

安倍晋三首相は、辺野古新基地の建設を強行しながら「沖縄に寄り添う」と繰り返す。ならば、なぜ、大浦湾側に軟弱地盤があることに気付きながら、2年も隠し続けたのか。

普天間飛行場は移設ではなく、全面返還が可能なはずである。政府の言う「抑止力」の虚構ぶりは、海兵隊の実戦部隊の大半が沖縄から出ていくにもかかわらず、引き留めもせず、米軍のなすがままにしていることから明らかだろう。

民主主義は「知る権利」が保障されなければ成り立たない。
情報を隠し、ごまかし、都合よくデータを入れ替える。そんな政府に安全保障のかじ取りを任せている。民意をくみ取り、政治に反映させるという民主国家の原点は遠くに霞んでいる。

新外交イニシアティブ(ND)主催シンポ「沖縄の未来を拓く―安全保障・経済・社会の観点から」19日午後7時開演。沖縄市民小劇場あしびなーにて。登壇者は柳澤協二、上間陽子、屋良朝博、猿田佐世各氏と半田滋。

半田滋・東京新聞論説兼編集委員

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