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'15/01/05 The Japan Times

シンクタンクが日米外交に沖縄の声を届ける(ジャパン・タイムズ記事和訳)

"Think tank gives Japan-U.S. diplomacy an Okinawan voice"

「シンクタンクが日米外交に沖縄の声を届ける」 The Japan Times  (’15/01/05)
(翻訳:新外交イニシアティブ)

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11月の米ワシントンポスト紙のインタビューで、安倍首相は日米間の同盟を「日本外交の基礎」と呼んだ。米国務省もこの見解を支持している。国務省はウェブサイト上で、「日本は政治、経済、そしてモラル面におけるかけがえのない支援を通じて、両国間の外交努力に寄与している」と明言した。

しかしながら、新外交イニシアティブ事務局長の猿田佐世氏は、日米関係についてのこのような公式コメントは誤解を招く恐れがあると述べる。

「実際には、日本と米国の外交チャンネルはあまりに狭いものです。日本側は少数の保守派の人々に留まり、日本社会に存在する多様な世論を外交に反映することができていません。米国側でも日米関係についての決定に影響を与える人は十数人ほどしかいないのです」。自身のオフィスでのインタビューにおいて、猿田氏はこう説明した。

猿田氏は、人権問題を専門とする弁護士であり、過去にアムネスティ・インターナショナル及びヒューマン・ライツ・ウォッチで活動していた経歴を持つ。ニューヨークとワシントンを拠点としていた2007年から2012年の間に、欠陥のある日米外交の現実を幾度となく目の当たりにした。特に猿田氏が問題であると感じたのは、米国の政策決定者たちの沖縄に対する知識や関心の欠如だった。(沖縄には30を超える自国の軍基地が存在しているにもかかわらず。)

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2009年、猿田氏は沖縄の基地問題について話すべく、米下院外交委員会のアジア・太平洋小委員会委員長と面談した。この委員会は日本を含むアジア地域と米国との関係を管轄する委員会である。猿田氏によると、面談の中で委員長は、沖縄県の総人口は2千人ほどと考え(当時の沖縄の実際の人口は約140万人)、沖縄に民間空港があることさえも把握していない状態だった(沖縄は国際的に有名な観光地である)。

2010年12月、日米関係についての政策決定者がその職に適していないのではないかとの猿田氏の疑念は、米国務省日本部長のケヴィン・メア氏との面談に出席した際にさらに強まることになった。報道によると、メア氏は沖縄の人々を「ゴーヤの栽培も満足にできない怠け者」「ごまかしとゆすりの名人」と批判していた。この発言についてメア氏は後に正確ではないと主張したものの、これは大きな物議を醸し、彼は日本部長更迭となった。

沖縄に対する関心のなさはワシントンの米国人専門家や日本人外交コミュニティに蔓延していたと猿田氏は言う。両国間には異なるコミュニケーションルートが必要だと確信した猿田氏は、同じような考えを持つ外交団体を探した。だが驚いたことにそういった団体は一つもなく、結果、彼女は自身での立ち上げを決意するに至った。

こうして2013年に活動を開始した新外交イニシアティブは、猿田氏によれば、日米や東アジア諸国間における議論に新しい声を反映させることを目的とするシンクタンクである。同氏を中心に、理事にはジャーナリストの鳥越俊太郎氏、元防衛庁官房長の柳澤協二氏、ジョージ・ワシントン大学准教授のマイク・モチヅキ氏が名を連ねる。

2014年、新外交イニシアティブは国内で13回、米国で4回のシンポジウムを開催し、日中関係や安倍首相の集団的自衛権行使の容認などについてディスカッションを行った。しかし一方で、新外交イニシアティブにとって依然重大な課題が残っていた。猿田氏をシンクタンク創設に駆り立てるそもそものきっかけとなった沖縄問題である。

昨年は沖縄にとって激動の一年だった。日本政府が長らく止まっていた名護市辺野古での米軍基地新設の取り組みを進めたためだ。海上では海域調査を阻止しようとする反対派の人々に対して海上保安庁が暴力的な弾圧を実施し、陸地では年配のデモ参加者が警察との乱闘で怪我を負った。11月の県知事選挙では基地新設反対派の翁長雄志氏が当選し、12月の衆議院選挙では安倍首相擁する基地建設賛成派の議員は沖縄の4つ全ての小選挙区で敗北した。このような圧倒的な反対にもかかわらず、日本政府は基地建設を予定通り進めていくことを発表した。

米メディアが、東京が沖縄の民意を軽視していることや日米安保同盟の名の下に行われている暴力について十分に報じていないことを受け、新外交イニシアティブは沖縄の代表者を米国に連れて行き、現地の怒りの声を届けている。

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5月、猿田氏は名護市長の稲嶺進氏のニューヨークならびにワシントンの訪問に同行した。10日間の滞在期間中、稲嶺氏は米市民団体と面談し、米国防総省が計画している名護市内での基地建設計画についての説明を行った。また米下院議員や元大統領補佐官(安全保障担当)のジェームズ・L・ジョーンズ氏らと一連の面談を行い、議論を行った。

9月、猿田氏は元米国防総省高官で1972年の沖縄返還において重要な交渉役を担ったモートン・ハルペリン氏の沖縄訪問を企画した。訪問中、ハルペリン氏は在沖米軍基地に批判的な立場を示し、日米両政府は沖縄の民意を尊重すべきだと強調した。

ハルペリン氏が関わった1972年の沖縄返還協定においては、沖縄の米軍基地は日本本土と同じレベルまで軽減されるはずだった(「本土並み」と呼ばれる)。しかし今日、沖縄は日本の国土面積の1パーセントにも満たない県であるにもかかわらず、そこには日本全国の米軍基地の70%以上が集中している。

返還からの数十年間というもの、数々の犯罪、事故、環境汚染問題に対し、沖縄住民は怒りに耐えてきた。例えば、この11 月には泥酔し米軍兵士が沖縄中部の北谷町のアパートに不法侵入。12月には米海兵隊少佐が67歳の男性をひき逃げし重傷を負わせたことを認めたほか、陸軍大尉が沖縄の警察官に暴行を加えたとされている。また、元日には、またしても沖縄市内での不法侵入の容疑で空軍兵士が逮捕された。

日本本土でこのような事件が報道されることは滅多にないため、在沖米軍基地がもたらす問題の重大性を理解する日本人は殆どいないと猿田氏は述べる。

「地理的に沖縄は東京からかなり離れた位置にあるため、本土の日本人は沖縄で起こる問題を簡単に流してしまうのです。沖縄の抱える問題に無関心な人々や、日本の防衛のために沖縄の米軍基地は必要だと考えている人々は大勢います。」と猿田氏は述べる。

8月に新外交イニシアティブは、書籍「虚像の抑止力」を出版した。在沖米海兵隊が日本を防衛し地域の安定を維持しているとの神話を払拭するためである。

著者の一人であるジャーナリストの屋良朝博氏は、2003年の韓国政府の報告書を引用し、朝鮮半島で起こりうる紛争を鎮圧するためには70万の軍が必要となると記載した。

「在沖米海兵隊は1万8千人のみで、これでは朝鮮半島での有事を抑止することはできないでしょう。日本政府にとって、在沖米軍の存在は鎮静剤のようなもの。政府の気休めにしかならない。」とジャパンタイムズに語った。

屋良氏は辺野古の大型基地建設計画を、想像力の欠如の現れとして捉えている。

「米国と日本の政府は他の可能性を考えることを放棄している。東京とワシントンの官僚は仕事を増やしたくないだけだ。これは怠慢であり、彼らは前任者の決めたことに何も考えずに従っているだけです」。屋良氏はこう話した。

先月、在沖米軍基地の抑止力に対する懐疑的なこの見解は、クリントン政権下で国防次官補を務めていたジョセフ・ナイ氏から予期せぬ支持を受けることになる。朝日新聞のインタビューでナイ氏は、米軍は機動性を高めるとともに固定化された基地(辺野古の新しい基地計画を含む)への過剰依存から脱却すべきだと促した。また新規に基地建設を進めていくにあたっては、いずれの計画においても沖縄に住む人々の意見が考慮される必要性があると強調した。

新外交イニシアティブ事務局長の猿田氏は、経済的な視点から沖縄基地問題について考えるよう述べた。米軍は沖縄全体の20パーセントの土地を使用しているが、沖縄への経済的な貢献は全体の5パーセントに満たないという。米軍基地の存在は経済成長を妨げていると彼女は話した。

なお、猿田氏は米軍を本国に戻すことは米国国内に利益をもたらすと考えている。兵士やその家族の本国移転で、基地受入地域(その多くが国防予算の予算削減に苦しんでいる)に多額の現金をもたらすと考えられるからだ。このことを念頭に、猿田氏は沖縄県知事の翁長氏と、先日ハワイ州知事に当選した沖縄の血を引くデービッド・イゲ氏を始めとする米国各州知事の会合を調整できることを期待している。

新外交イニシアティブにとって、2015年は多忙な一年になるだろう。沖縄の代表者たちが沖縄の将来に関わる政策決定に影響力を持つ米国の人々と接触できるよう沖縄県の事務所がワシントンに設立される。猿田氏はその事務所設立への支援を希望している。また、新外交イニシアティブは「日米地位協定の国際比較」など他の大型プロジェクトも進めている。

(ジョン・ミッチェル)