研究・報告

イスラエル支持の西側へ高まる批判 「日本のため」にも仲介を

 

「イスラエルに対する支援は、強固で揺るぎない」。バイデン大統領は、ハマスのイスラエル攻撃直後から全面的なイスラエル支持を表明してきた。その後、国際社会の反発もあり、人道支援なども打ち出すようになったが基本は変わらず、121ヵ国が賛成した休戦(非公式に戦闘を一時的に停止すること)を求める国連決議にも反対した。欧米諸国はイスラエルの自衛権を支持する声明も出している。

この西側の強いイスラエル支持の姿勢は、アラブ諸国を超え、世界の人々に衝撃を与えている。「パレスチナ問題の元凶は欧州にある」「イスラエル建国後のパレスチナの苦境は欧米も責任を負うべきだ」など、欧米への批判が噴出する。過去にも同様の批判は見られたが、しかし、今回の欧米への批判は今まで以上に大きな意味を持つだろう。既に始まっていた欧米中心の国際社会からの構造転換を、さらに加速することになり得るからである。

この間、米国は「民主主義vs権威主義」として、中露との対立において自らこそが民主主義や人権、法の支配を推進する「正義の側」にあると謳ってきた。しかし、今回のイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃は、「文民保護」や目的と手段のバランスを求める「比例原則」など多くの点で明らかな国際法違反である。世界中の少なくない人々、特にグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の人々がこの二重基準の欺瞞性を厳しく指摘している。

例えば、ヨルダンのラーニア王妃は、イスラエルによるガザ砲撃での民間人の死を非難しない西側指導者は「明らかな二重基準だ」と批判し、マレーシアのアンワル首相は「西側諸国が主張している民主主義の理想や人権はどこへ行ったのか」と憤る。これらグローバルサウスの声は、アフリカやアジアを非人道的に植民地支配していた西欧についての各地の歴史の記憶にも基づいており、時に欧米憎悪にまで達している。

イスラエルの攻撃が長引き、パレスチナの被害がさらに広がれば、こうした声はさらに強まるだろう。そもそも、国の数でも人口でも世界の過半を占めるグローバルサウスの声はここ数年で急速に大きくなり、経済力もつけながら、西側に物申すようになってきている。西側だけで物事を決められる時代は終焉を迎えている。

日本政府は、欧米と異なる中東における「中立外交」を誇りにしてきた。もっとも、今回は、当初こそ双方に自制を求めるなどしたものの、米国の顔色を見て、休戦を求める国連決議を棄権し、危機を収めるための仲介役を担おうとする様子もない。主要7カ国(G7)が外相会合で打ち出した「人道的休止」は一時的・局地的なもので不十分であり、停戦に向けた働きかけが必要である。停戦は、当事者同士が長期的かつ戦闘地域の全体で戦闘停止に合意することだ。多くの命を救うために一刻も早く実現されねばならない。

さらに、あえて指摘すれば、より日本政府の関心の中心にあるであろう「現在の国際秩序」も、早期に戦争を収束させなければ加速度的に瓦解に近づくかもしれない。このことを日本政府はどのくらい理解しているだろうか。

日本周辺の安全保障環境に目を移せば、イスラエルに自制を求め停戦交渉を提案する中国の立場が際立ち、この紛争で利益を得たのは中国だとの評もある。また、日本政府が中国対策として連携強化を追求する東南アジアにはイスラム教徒を多く有する国も多く、例えば、前述のアンワル・マレーシア首相は「ガザの危機について、東南アジア諸国連合(ASEAN)と湾岸諸国は団結している」と述べている。

そもそも、近年、グローバルサウスの多くの国は、米中、米露いずれの側にもつかないとの立場を表明してきた。今回のガザ危機は、彼らがさらに欧米に厳しい姿勢を取り、国際社会の大きな構造変化を招きうる出来事であることを日本政府は自覚すべきである。停戦に向けた仲介の努力すらできなくて、何のための「中東における中立外交」か。「中立」が「何もしないこと」であってはならない。

231110北海道新聞6面